法人を設立する際、「合同会社」「株式会社」「有限会社」の違いを理解することは非常に重要です。
これらの法人形態は、設立費用や経営の仕組み、責任範囲などに大きな違いがあります。
本記事では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを徹底比較し、どの法人形態があなたに最適かを解説します。
特に、有限会社は現在新設できるのかどうかについても詳しく説明しますので、法人設立を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
合同会社・株式会社・有限会社とは何か
法人を設立する際には、どの形態を選ぶかが重要になります。
日本には「合同会社」「株式会社」「有限会社」の3つの法人形態があり、それぞれに特徴があります。
ここでは、それぞれの会社形態の基本的な違いを詳しく解説します。
合同会社とは
合同会社は、比較的新しい法人形態で、2006年5月1日に施行された「会社法」によって導入されました。
アメリカの「LLC(Limited Liability Company)」をモデルにした制度で、柔軟な経営が可能であることが特徴です。
合同会社の主な特徴
特徴 | 内容 |
---|---|
設立のしやすさ | 設立費用が安く、登記手続きも比較的簡単 |
経営の柔軟性 | 出資者(社員)が直接経営に携わることができる |
有限責任 | 出資者は出資した範囲でのみ責任を負う |
利益配分 | 出資比率に関係なく定款で自由に決められる |
合同会社は、小規模事業やスタートアップ企業に適した法人形態です。
経営の自由度が高く、設立コストも低いため、個人事業主から法人化する際に選ばれることが多いです。
株式会社とは
株式会社は、日本で最も一般的な法人形態で、会社法に基づいて設立されます。
「株式」を発行して資金を調達し、その株主によって所有されるため、規模の大きい企業に適しています。
株式会社の主な特徴
特徴 | 内容 |
---|---|
資金調達 | 株式を発行し、投資家から資金を集めることが可能 |
経営と所有の分離 | 株主と経営者(取締役)が分かれている |
社会的信用 | 株式会社は社会的な信用が高く、取引先や金融機関からの信頼を得やすい |
有限責任 | 株主は出資額の範囲内でのみ責任を負う |
株式会社は、取引先の信用を重視する事業や、将来的に上場を目指す企業に適しています。
設立に際しては合同会社よりも手続きが複雑で費用も高いですが、社会的信用の高さや資金調達のしやすさが大きなメリットです。
有限会社とは
有限会社は、かつて会社法施行前に設立可能だった法人形態で、2006年の会社法施行により新規設立はできなくなりました。
ただし、現在も存続する有限会社は「特例有限会社」として引き続き営業できます。
有限会社の主な特徴
特徴 | 内容 |
---|---|
設立要件 | 資本金300万円以上が必要(現在は新規設立できない) |
経営の安定性 | 株式の発行がなく、少数の出資者で経営が可能 |
組織のシンプルさ | 取締役の任期がなく、変更手続きが少ない |
有限会社は、家族経営の企業や長年続く中小企業で多く見られます。
現在は新たに有限会社を設立することはできませんが、特例有限会社として存続すれば法人格を維持でき、株式会社に移行することも可能です。
以上のように、合同会社・株式会社・有限会社にはそれぞれ異なる特徴があります。
事業内容や経営方針に応じた法人形態を選ぶことが重要です。
合同会社・株式会社・有限会社の違いを徹底比較

設立のしやすさと費用
会社を設立する際の手続きや費用は、法人の種類によって異なります。
特に合同会社と株式会社では、設立時のコストや必要な手続きに大きな差があります。
法人形態 | 設立費用 | 必要な手続き |
---|---|---|
合同会社 | 約6万円(登録免許税など) | 定款作成、公証人の認証不要、登記申請 |
株式会社 | 約24万円(登録免許税・定款認証費用など) | 定款作成、公証人の認証、登記申請 |
有限会社 | 新設不可 | 新規設立は不可能だが、既存の有限会社は存続可能 |
合同会社は設立費用が安く、手続きが簡単なため、起業時のコストを抑えたい個人や小規模事業に向いています。
一方、株式会社は設立費用が高く、公証人を介した定款認証が必要ですが、信用力が高いというメリットがあります。
経営の仕組みと意思決定
会社の経営体制と意思決定の仕組みは、出資者や役員によって異なります。
各法人形態の代表的な特徴を比較すると、次のようになります。
法人形態 | 所有と経営の関係 | 意思決定 |
---|---|---|
合同会社 | 出資者=経営者 | 出資比率に関係なく、社員全員の合意が必要 |
株式会社 | 所有(株主)と経営(取締役)が分離 | 株主総会や取締役会による決議 |
有限会社 | 出資者=経営者(従来の制度を維持) | 株主総会不要、取締役の決定で経営を進められる |
合同会社は社員(出資者)が経営権を持ち、意思決定が柔軟に行えます。
一方、株式会社は経営と所有が分離されているため、外部の資本調達がしやすいですが、意思決定のプロセスが複雑になります。
出資者と責任の範囲
出資者の責任の範囲についても、法人形態ごとに違いがあります。
法人形態 | 出資者の責任 |
---|---|
合同会社 | 有限責任(出資額の範囲内で責任) |
株式会社 | 有限責任(出資額の範囲内で責任) |
有限会社 | 有限責任(出資額の範囲内で責任) |
合同会社・株式会社・有限会社ともに出資額を超える責任は負わない有限責任ですが、実際の経営の自由度や投資家の関与度には違いがあります。
信用度と社会的なイメージ
法人形態によって取引先や金融機関からの信用度が異なります。
一般的には、株式会社のほうが信用力が高いとされています。
法人形態 | 信用度 |
---|---|
合同会社 | 低め(認知度が低く、法人格の信頼性が劣る傾向) |
株式会社 | 高め(企業としての信頼性が高く、大手企業との取引がしやすい) |
有限会社 | 中程度(老舗企業には一定の信用があるが、新設不可のため減少傾向) |
株式会社は資本金が多く、取引先からの信頼が得られやすい傾向にあります。
一方、合同会社は近年増えてきているものの、大手企業と取引する際などには信用度の点で不利になりがちです。
税金と会計の違い
税金や会計処理の面でも違いがありますが、基本的な法人税に関しての税率に大きな違いはありません。
ただし、株式を発行する株式会社では配当の税務処理が発生する場合があります。
法人形態 | 会計処理の厳格さ | 税務上の特徴 |
---|---|---|
合同会社 | 比較的簡易 | 利益配分が自由で柔軟 |
株式会社 | 厳格な会計基準を要求 | 配当を行う場合はその分の税務処理が発生 |
有限会社 | 株式会社に準じる | 既存の法人税制度に従い処理 |
合同会社は利益配分の自由度が高く、経営者による資金管理がしやすい特徴があります。
一方、株式会社は配当処理や会計基準が厳格なため、組織的な財務管理を求められます。
合同会社・株式会社・有限会社のメリットとデメリット

合同会社のメリットとデメリット
合同会社のメリット
合同会社(LLC)は、日本において設立手続きが簡単で費用が安い点が主なメリットです。
株式会社に比べて定款認証が不要であり、設立コストを抑えられるため、個人事業主から法人化を検討する人や小規模なビジネスを始めたい人に適しています。
また、合同会社は経営の自由度が高く、迅速な意思決定が可能です。
出資者(社員)が直接経営に関与するため、株主総会などの手続きを必要とせず、経営判断が柔軟にできます。
加えて、合同会社は利益の配分を自由に決めることができる点も特徴的です。
株式会社のように出資比率に応じた配分ではなく、定款で自由に利益分配のルールを決めることが可能です。
合同会社のデメリット
一方で、合同会社には社会的信用度が株式会社に比べて低いというデメリットがあります。
日本ではまだ合同会社の認知度が低いため、取引先や金融機関によっては信頼性を欠くと判断されることがあります。
また、合同会社では出資した社員が会社の代表として業務を執行するため、出資者間で対立が生じた場合に経営が不安定になる可能性があります。
株式会社のような第三者株主がいないため、外部からの経営監視の視点が欠ける点もリスクの一つです。
さらに、合同会社は上場(IPO)ができないため、資金調達の手段が限られています。
大規模な事業展開を考える場合は注意が必要です。
株式会社のメリットとデメリット
株式会社のメリット
株式会社は社会的信用度が高いことが最大のメリットです。
株式会社という法人形態は広く認知されており、取引先や金融機関からの信頼が得やすく、銀行融資や資金調達のしやすさにもつながります。
また、株式会社は出資者と経営者を分離できるため、オーナーが経営から手を引いても事業を継続できます。
株主は経営権を持たない限り業務執行を行わないため、プロの経営者を雇うことができるのも魅力です。
さらに、株式会社は株式発行による資金調達が可能であり、企業成長に伴う増資や上場が行えます。
IPOを目指す事業や、大規模なビジネス展開を考えている場合には、非常に有利な法人形態です。
株式会社のデメリット
株式会社を設立する際には設立費用が高いことがデメリットとなります。
定款の認証費用や登録免許税が必要であり、合同会社と比較して初期コストがかかります。
また、株式会社は経営の自由度が低い点も注意が必要です。
株主総会や取締役会など、決定プロセスが複雑になり、迅速な意思決定が難しくなることがあります。
特に中小企業の場合、株主構成や経営陣の対立により経営が不安定になるリスクも考慮する必要があります。
有限会社のメリットとデメリット
有限会社のメリット
有限会社は株式会社と比べて運営コストが低く、管理が簡単であることが大きなメリットです。
取締役会を設置する義務がなく、意思決定のスピードも速いため、経営の自由度が高い法人形態といえます。
また、有限会社は廃止されているものの、既存の有限会社は存続できるため、「老舗企業」としての信頼性を活かすことができます。
有限会社のデメリット
有限会社は2006年の会社法改正により新規設立ができない点が最大のデメリットです。
そのため、現在は合同会社または株式会社としての設立しか選択肢がありません。
また、有限会社には株式会社と比べると知名度がやや低いという側面があるため、取引先によっては信用面に影響を与える可能性があります。
項目 | 合同会社 | 株式会社 | 有限会社 |
---|---|---|---|
設立費用 | 安い | 高い | 新規設立不可 |
意思決定のスピード | 速い | 遅い(株主総会や取締役会が必要) | 速い |
社会的信用度 | やや低い | 高い | 比較的高い(老舗企業が多い) |
資金調達 | 制限あり | 株式発行で容易に可能 | 制限あり |
法人の継続 | 出資者の変更に影響を受けやすい | 出資者が変わっても存続可能 | 存続可能 |
どの法人形態を選ぶべきか

どんな人に合同会社が向いているか
合同会社は設立費用を抑えながら、スピーディーにビジネスを始めたい人に向いています。
株式会社と比較すると、定款の認証が不要であり、登録免許税も低いため、費用と手間をかけずに設立できます。
また、少人数で効率的に経営を行いたい場合も合同会社が適しています。
合同会社では出資者である社員全員が経営に関与できるため、迅速な意思決定が可能です。
これにより、柔軟に経営方針を決定し、スムーズに事業を進めることができます。
さらに、外部投資を受ける予定がなく、自己資本での運営を考えている事業にも適しています。
合同会社は株式を発行できないため、公募増資や株式上場はできませんが、その分、経営権を維持しながら事業を展開できます。
どんな人に株式会社が向いているか
株式会社は事業を大きく成長させたい人に適しています。
他者からの資金調達がしやすく、銀行からの融資やベンチャーキャピタルの出資を受ける際にも有利です。
特に、株式の発行により多くの投資家から資本を集めることが可能となり、資金面での成長余地が大きく広がります。
また、社会的信用を重視する事業にも株式会社が向いています。
株式会社は一般に知名度が高く、取引先や金融機関からの信用度が比較的高いため、大手企業との取引を考えている場合には有利に働きます。
さらに、経営責任を明確にしながら組織的な運営を行いたい人にもおすすめです。
株式会社では、株主、取締役、監査役などの役割が明確に分かれており、会社の経営体制をしっかり整えながら運営できます。
そのため、従業員が多くなることを前提とした組織づくりにも適しています。
有限会社は今設立できるのか
現在、日本では新たに有限会社を設立することはできません。
2006年の会社法施行により、有限会社の新規設立は廃止され、既存の有限会社は「特例有限会社」として存続しています。
特例有限会社は法人格として存続できますが、新たに設立することはできないため、これから会社を設立する場合は、合同会社か株式会社のいずれかを選ぶ必要があります。
法人形態 | 設立できるか | 主な特徴 |
---|---|---|
合同会社 | ◯(可能) | 設立費用が安く、柔軟な経営が可能 |
株式会社 | ◯(可能) | 社会的信用が高く、資金調達がしやすい |
有限会社 | ×(不可) | 新規設立不可(既存のものは存続可能) |
もし、これまで有限会社として運営していた企業が株式会社への移行を検討する場合は「株式会社への組織変更」という手続きを行うことが可能です。
これにより、株式会社としての信用度を高め、資金調達の選択肢も広がります。
結論として、新しく会社を設立する場合は、合同会社または株式会社から選ぶ必要があります。
それぞれの法人形態のメリット・デメリットを理解し、事業の方針や目的に合わせて適切な形態を選びましょう。
合同会社・株式会社・有限会社の設立手続き

合同会社の設立方法
合同会社の設立は比較的簡単で、設立費用も抑えることができます。
ここでは、合同会社を設立するための具体的な手順について詳しく解説します。
1. 商号(会社名)の決定
合同会社を設立する際は、まず商号を決定する必要があります。
商号には「合同会社」という文言を含める必要があり、同一住所内で既存の会社と同じ名前は使用できません。
2. 会社の所在地の決定
会社の本店所在地を決定します。
これは登記申請に必要ですので、正確に決めておく必要があります。
3. 事業目的の決定
会社が行う事業内容を明確にします。
法的に認められる範囲内で、具体的に記載することが求められます。
4. 出資者(社員)の決定と出資金の確定
合同会社では、出資者を「社員」と呼び、全員が会社の経営に参加することができます。
また、出資金額を決定し、実際に払い込みを行う必要があります。
5. 定款の作成と認証
合同会社では定款の作成が必要ですが、公証役場での認証は不要です。
定款には、以下の内容を記載する必要があります。
- 商号
- 本店所在地
- 事業目的
- 社員の氏名および住所
- 出資金額
- 決算期
6. 登記申請の準備と提出
法務局に設立登記を申請します。
登記には、以下の書類が必要になります。
必要書類 | 詳細 |
---|---|
定款 | 会社の基本ルールを記載 |
設立登記申請書 | 登記のための正式な申請書 |
代表社員の印鑑証明書 | 本人確認のために必要 |
払込証明書 | 出資金が払い込まれたことを証明 |
印鑑届出書 | 会社の印鑑を登録 |
7. 設立後に必要な手続き
会社を設立した後は、税務署や自治体への届け出が必要です。
- 税務署に法人設立届出書を提出
- 都道府県税事務所に事業開始届を提出
- 必要に応じて社会保険・労働保険の加入手続きを実施
株式会社の設立方法
株式会社の設立手続きは、合同会社よりもやや煩雑になりますが、信用度の高さから多くの企業がこの形態を選択しています。
1. 商号と本店所在地の決定
株式会社を設立する際、商号(会社名)と本店所在地を決定します。
商号には「株式会社」を含める必要があります。
2. 事業目的の決定
会社の活動内容を明確にし、許認可が必要な場合は適切な手続きを取る必要があります。
3. 発起人の決定と出資金の確定
株式会社では、会社の創設者を「発起人」と呼びます。
発起人は出資金額を決定し、資本金として払い込みます。
4. 定款の作成と認証
定款を作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。
定款には以下の事項を含める必要があります。
- 商号
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 株式の発行に関する規定
5. 登記申請
法務局に設立登記を申請します。
必要な書類は以下の通りです。
必要書類 | 詳細 |
---|---|
定款 | 公証役場で認証を受けたもの |
設立登記申請書 | 法務局に提出 |
代表取締役の印鑑証明書 | 本人確認のため |
払込証明書 | 資本金の振込証明 |
6. 設立後の手続き
税務署や自治体、社会保険関連の届け出を行います。
- 法人設立届出書の提出
- 事業開始届の提出
- 社会保険・労働保険の申請
有限会社は新設できるのか
2006年の会社法改正により、新たに有限会社を設立することはできなくなりました。
ただし、既存の有限会社は「特例有限会社」として存続可能です。
有限会社を新たに設立したい場合、現在は合同会社が最も近い形態となります。
そのため、新規で法人を設立する場合は合同会社または株式会社を選択することになります。
まとめ
合同会社・株式会社・有限会社にはそれぞれ異なる特徴があり、設立コストや経営の仕組み、信用度などに違いがあります。
合同会社は設立費用が安く、柔軟な経営が可能ですが、社会的信用度は株式会社に劣ります。
株式会社は信用度が高く資金調達がしやすいですが、設立・運営コストがかかります。
有限会社は現在新設できないため、過去に設立された法人のみが存続可能です。
自分の事業目的や将来の展望に応じて最適な法人形態を選びましょう。