【知らないと後悔】バーチャルオフィス登記のデメリットとは?銀行口座開設で失敗する前に

「コストを抑えて都心の一等地に法人登記できる」という魅力的なバーチャルオフィスですが、その裏に潜むデメリットを知らないまま契約すると、事業のスタートで思わぬ壁にぶつかる可能性があります。
特に、法人口座の開設を断られたり、融資審査で不利になったりといった問題は、ビジネスの根幹を揺るがしかねません。

結論からお伝えすると、バーチャルオフィス登記のデメリットは確かに存在しますが、その多くは事前の知識と適切な対策によって回避することが可能です。

この記事では、バーチャルオフィスでの法人登記を検討しているあなたが後悔しないために、知っておくべき5つの具体的なデメリットとその理由を徹底解説します。

さらに、銀行口座開設や融資で失敗しないための具体的な対策から、登記でつまずかないバーチャルオフィスの選び方まで、あなたの不安を解消し、賢く事業をスタートするための知識を網羅的にお伝えします。

バーチャルオフィスで法人登記する前に知るべき5つのデメリット

バーチャルオフィスは、事業立ち上げ時のコストを劇的に抑えられる魅力的なサービスです。
しかし、その手軽さの裏に潜むデメリットを理解せずに法人登記を進めてしまうと、「こんなはずではなかった」と後悔する事態に陥りかねません。
特に、事業の根幹に関わる銀行口座の開設や融資、許認可の取得で思わぬ壁にぶつかる可能性があります。

ここでは、契約前に必ず知っておくべき5つの重大なデメリットを具体的に解説します。

デメリット1 銀行の法人口座開設の審査が厳しい

バーチャルオフィス登記における最大の障壁と言っても過言ではないのが、法人口座の開設です。

事業を行う上で不可欠な銀行口座ですが、バーチャルオフィスの住所で申し込むと、多くの金融機関で審査が厳しくなる傾向にあります。
これは、犯罪収益移転防止法(犯収法)の強化に伴い、金融機関が口座開設希望者の事業実態をより厳格に確認するようになったためです。

メガバンクや地方銀行で断られる理由

三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行といったメガバンクや、地域に根差した地方銀行、信用金庫などは、特にバーチャルオフィスでの法人口座開設に慎重な姿勢を見せます。
その主な理由は以下の通りです。

  • 事業実態の確認が困難:物理的な執務スペースがないため、銀行の担当者が訪問しても事業が本当に行われているかを確認できません。事業の実在性を客観的に証明しにくいことが、審査における最大のネックとなります。
  • 犯罪利用への警戒:過去にバーチャルオフィスが詐欺やマネーロンダリングなどの犯罪に悪用されたケースがあったことから、銀行側はリスクを回避するために審査を厳格化しています。
  • 固定電話回線の不在:社会的な信用度を示す要素の一つとして、固定電話番号の有無を重視する金融機関は少なくありません。携帯電話番号のみでの申し込みは、信用面で不利に働くことがあります。

これらの理由から、十分な準備なく申し込んでも、審査に通らず門前払いとなってしまうケースが後を絶ちません。

ネット銀行なら開設しやすいは本当か

「メガバンクがダメならネット銀行なら大丈夫」という話を耳にすることがありますが、この認識は必ずしも正しくありません。
確かに、GMOあおぞらネット銀行や住信SBIネット銀行、楽天銀行などは、実店舗を持たないビジネスモデルであることから、バーチャルオフィスでの口座開設実績が比較的多いとされています。

しかし、近年はネット銀行もコンプライアンス強化の流れを受けており、審査基準は年々厳しくなっています。
単に「バーチャルオフィスOK」と公言している銀行に申し込むだけでは、簡単に審査を通過することはできません。

審査に通るためには、事業内容を明確に説明できるウェブサイトや、収益モデルが詳細に記載された事業計画書、取引先との契約書など、事業の実態を証明する客観的な資料を念入りに準備することが不可欠です。
安易な期待は禁物と心得ましょう。

デメリット2 日本政策金融公庫などの融資で不利になる可能性

起業時の資金調達で多くの事業者が利用を検討する日本政策金融公庫の創業融資ですが、ここでもバーチャルオフィスでの登記が不利に働く可能性があります。

絶対に融資が受けられないわけではありませんが、物理的なオフィスを構えている場合に比べて、審査のハードルが上がることは覚悟しておくべきです。

不利になる主な理由は、法人口座開設と同様に「事業の本気度」や「事業の継続性」に対する疑念を抱かれやすいためです。

融資担当者は、事業計画の妥当性だけでなく、代表者の事業への熱意や覚悟も評価します。

事務所を構える資金すらない、あるいはコストを極端に削減しようとしている、と見なされると、事業の安定性や収益性への評価が厳しくなる傾向があります。
特に、自己資金が少ない場合や事業計画の具体性に欠ける場合は、バーチャルオフィスであることがマイナス評価に繋がりやすいと言えるでしょう。

デメリット3 特定の事業では許認可が取得できない

事業を始めるにあたり、国や都道府県などから許認可を得る必要がある業種が存在します。
これらの業種の中には、許認可の要件として「独立した営業所(事務所)」の設置が法律で義務付けられているものが多くあります。
この場合、住所を借りるだけのバーチャルオフィスでは要件を満たせず、法人登記自体はできても、肝心の事業を開始することができません。

許認可が下りない業種の具体例

以下に挙げる業種は、バーチャルオフィスでの開業が原則として認められていない、あるいは非常に困難な代表例です。
これらの事業を計画している場合は、バーチャルオフィスの利用は選択肢から外すべきでしょう。

業種分類具体的な業種名主な理由
士業弁護士、司法書士、行政書士、税理士など業務の性質上、顧客のプライバシー保護や守秘義務の観点から独立した事務所の設置が各士業法で定められているため。
建設・不動産業建設業、宅地建物取引業(不動産業)建設業法や宅地建物取引業法により、営業活動を行うための物理的な事務所の設置が義務付けられているため。
人材サービス業人材派遣業、有料職業紹介事業事業所の面積要件や、個人情報を適切に管理できる環境(施錠できる書庫など)が求められるため。
リサイクル・中古品販売古物商、産業廃棄物処理業盗品等の流通防止や在庫の適正な管理のため、警察署などが営業所の実態を厳しく確認するため。
その他探偵業、金融商品取引業、警備業など各業法で営業所の設置や届出が義務付けられており、物理的なスペースが必須となるため。

許認可申請でバーチャルオフィス登記が問題になるケース

許認可申請で問題となるのは、事務所要件における「独立性」と「専用性」です。
多くの許認可では、事業運営のためだけに利用される専用のスペースであり、他の法人や個人の生活スペースと明確に区分されていることが求められます。
複数の企業が住所を共有するバーチャルオフィスは、この「独立した営業所」という要件を構造的に満たすことができません。
許認可が必要な事業を始める際は、必ず事前に管轄の行政機関(都道府県庁、保健所、警察署など)に事務所要件を確認することが絶対条件です。

デメリット4 社会的信用度が低く見られやすい

コストメリットが大きいバーチャルオフィスですが、ビジネスの世界では依然として「住所」が会社の信用度を測る一つの指標となっています。
特に、歴史の長い業界や大企業との取引を視野に入れている場合、バーチャルオフィスの住所が社会的な信用面で足かせとなる可能性があります。

取引先があなたの会社の住所をインターネットで検索した際に、バーチャルオフィスの運営会社のウェブサイトが表示されれば、事業の実態が掴みにくい、あるいは事業規模が非常に小さいといった印象を与えかねません。
これは、新規取引を開始する際の与信審査でマイナス評価を受けたり、商談の機会を失ったりするリスクに繋がります。

ウェブサイトにオフィスの写真や固定電話番号が掲載されていないことも、不信感に繋がる一因となり得ます。

ビジネスの相手によっては、物理的なオフィスを構えていることが信頼の証と見なされるケースがまだまだ多いのが実情です。

デメリット5 他の会社と住所が重複する

バーチャルオフィスは、一つの住所を多くの契約者で共有するサービスです。
この「住所の重複」という特性が、思わぬデメリットを生むことがあります。

最も注意したいのが、GoogleマップやGoogle検索に店舗・会社情報を表示させる「Googleビジネスプロフィール」の登録です。

同一住所に多数の事業者が登録されると、Googleのガイドライン違反と見なされ、自社の情報が正しく表示されなかったり、アカウントが重複と判断されて停止されたりするリスクがあります。
これは、オンラインでの集客や企業の信頼性確保において大きな打撃となり得ます。

また、万が一、同じ住所を利用している他の会社が何らかのトラブルや犯罪行為に関与した場合、風評被害を受ける可能性もゼロではありません。

自社に非がなくても、住所で検索された際にネガティブな情報と関連付けられてしまう恐れがあるのです。

信頼できる運営会社を選ぶことはもちろんですが、住所を共有すること自体のリスクは常に念頭に置いておく必要があります。

バーチャルオフィス登記のデメリットに関するよくある誤解

バーチャルオフィスでの法人登記を検討する際、インターネット上では様々なデメリットが指摘されています。
しかし、その中には情報が古かったり、特定の条件下でのみ当てはまる話が一般論として語られていたりと、誤解を招く情報も少なくありません。

ここでは、特に多くの方が不安に感じる「社会保険の加入」と「郵便物の受け取り」に関するよくある誤解を解き明かし、正しい知識を提供します。

社会保険や労働保険に加入できないというのは間違い

「バーチャルオフィスで登記すると、社会保険や労働保険に加入できない」という話を耳にすることがありますが、これは明確な誤りです。

結論から言うと、バーチャルオフィスの住所で法人登記した場合でも、社会保険(健康保険・厚生年金保険)および労働保険(雇用保険・労災保険)への加入は問題なく可能です。

これらの保険加入手続きにおいて最も重要なのは、登記上の住所がどこかということではなく、「法人として事業活動の実態があるか」という点です。

従業員を1人でも雇用し、給与を支払う法人であれば、法律上の加入義務が発生します。

行政機関(年金事務所やハローワークなど)は、この事業実態を確認して手続きを進めます。

ただし、手続きの際に事業実態を証明するための追加資料の提出を求められるケースがあります。

例えば、実際に業務を行っている場所(自宅や別の作業スペースなど)の賃貸契約書、従業員のタイムカード、業務委託契約書、公共料金の領収書などが該当します。

申請の際は、登記住所(バーチャルオフィス)と、実際に主たる業務を行っている事業所の住所を分けて記載し、実態に即した形で手続きを進めることが重要です。

事前に管轄の行政機関に問い合わせておくと、よりスムーズに手続きを進めることができるでしょう。

保険の種類主な手続き先バーチャルオフィス利用時のポイント
社会保険(健康保険・厚生年金)管轄の年金事務所事業の実態を証明する書類(業務委託契約書、請求書など)の提示を求められる場合があります。
労働保険(雇用保険・労災保険)管轄の労働基準監督署、ハローワーク従業員が実際に勤務する場所の情報を明確に説明する必要があります。

このように、手続き上で若干の手間が増える可能性はありますが、「加入できない」ということはありませんのでご安心ください。

郵便物が受け取れないという心配は不要

「バーチャルオフィスでは重要な郵便物が受け取れないのではないか」というのも、よくある心配事の一つです。しかし、これもほとんどの場合、気にする必要はありません。

現在のバーチャルオフィス運営会社の多くは、郵便物や宅配便の代理受け取りと、指定住所への転送サービスを基本プランに含んでいます

一般的なサービスの流れは以下の通りです。

  1. 法人登記したバーチャルオフィスの住所に郵便物が届く
  2. 常駐スタッフが代理で郵便物を受け取る
  3. 郵便物が届いた旨をメールなどで通知してくれる(運営会社による)
  4. 週1回や月1回など、契約プランに応じた頻度で指定の住所(自宅など)へ転送される

オプションサービスとして、郵便物が届き次第すぐに転送してくれる「即時転送」や、受け取った郵便物をスキャンしてデータで送ってくれる「PDF化サービス」などを提供している会社もあります。

出張が多い方や、海外に住みながら日本の法人を運営したい方にとっては非常に便利なサービスです。

ただし、いくつか注意すべき点もあります。

契約前には必ず以下の項目を確認しましょう。

  • 転送の頻度と料金: 郵便物の転送が週1回なのか月1回なのか、また転送料金は月額費用に含まれているのか、あるいは実費が別途請求されるのかを確認しましょう。
  • 受け取れない郵便物の種類: 「本人限定受取郵便」「現金書留」「クール便」「代金引換」「著しく大きい荷物」などは、多くのバーチャルオフィスで受け取り対象外となっています。特に、銀行のキャッシュカードやクレジットカードなどが「本人限定受取郵便」で送られてくる場合、受け取れずに返送されてしまうリスクがあります。この点は、後述する銀行口座開設のデメリットとも関連する重要なポイントです。

基本的な郵便物の受け取りに支障はありませんが、特殊な郵便物の受け取りルールについては、契約を検討しているバーチャルオフィスに事前にしっかりと確認しておくことが失敗を避ける鍵となります。

デメリットを上回ることも バーチャルオフィスで登記するメリット

ここまでバーチャルオフィスで法人登記する際のデメリットを解説してきましたが、それでもなお多くの起業家やフリーランスに選ばれているのには理由があります。
それは、デメリットを補って余りあるほどの大きなメリットが存在するからです。

特に「コスト削減」と「事業ブランディング」の観点から、バーチャルオフィスが事業のスタートダッシュを強力に後押しする理由を詳しく見ていきましょう。

事業開始の初期費用を大幅に削減できる

事業を始めるにあたり、最も大きなハードルの一つが初期費用です。
特に、物理的なオフィスを構える場合、多額の資金が必要となります。
しかし、バーチャルオフィスを利用することで、これらのコストを劇的に抑えることが可能です。

一般的な賃貸オフィスとバーチャルオフィスの初期費用およびランニングコストを比較すると、その差は一目瞭然です。

費用項目賃貸オフィス(都心小規模)の目安バーチャルオフィスの目安
保証金・敷金60万円~200万円(賃料の6~10ヶ月分)0円~1万円
礼金10万円~20万円(賃料の1~2ヶ月分)0円
仲介手数料10万円~20万円(賃料の1ヶ月分)0円
前家賃10万円~20万円数千円~1万円程度
内装・設備費数十万円~0円
オフィス家具・OA機器数十万円~0円
初期費用 合計100万円~300万円以上数千円~数万円
月額費用(賃料・利用料)10万円~30万円数千円~2万円程度

上記のように、賃貸オフィスでは数百万円単位の初期投資が必要になるケースも珍しくありません。
これに対し、バーチャルオフィスは入会金や初月利用料のみで済むため、事業開始時の資金的な負担を限りなくゼロに近づけることができます
この結果、削減できた資金を広告宣伝費、商品開発費、人材採用費といった事業の成長に直結する分野へ集中投資することが可能となり、ビジネスの成功確率を大きく高めることができるのです。

都心一等地の住所でビジネスができる

ビジネスにおいて、会社の住所は単なる所在地情報以上の意味を持ちます。
それは「会社の顔」とも言える重要なブランディング要素であり、顧客や取引先からの信頼性に直結します。

通常であれば高額な賃料でしか借りることのできない、東京都心のビジネス一等地の住所を、月々数千円という低コストで利用できる点は、バーチャルオフィスの最大の魅力の一つです。

例えば、ウェブサイトの会社概要や名刺に「東京都港区南青山」「東京都中央区銀座」「東京都渋谷区恵比寿」といった住所が記載されているだけで、以下のような多くのメリットが期待できます。

  • 顧客からの信頼獲得:実績がまだ少ない創業期であっても、住所が持つブランドイメージによって、しっかりとした会社であるという印象を与えやすくなります。
  • 取引先との関係構築:大手企業との取引や提携を考える際、信頼性の高い住所は交渉の場で有利に働くことがあります。
  • 人材採用への好影響:魅力的なオフィス所在地は、優秀な人材を惹きつける要因の一つとなり得ます。
  • プライバシーの保護:自宅の住所を法人登記やウェブサイトに公開する必要がなくなるため、特にフリーランスや女性起業家は安心して事業に集中できます。

地方に拠点を置きながら都心の住所でビジネスを展開したい、あるいは自宅で仕事をしながらもビジネス用の住所を確保したいといった多様なニーズに応えられるのも、バーチャルオフィスならではの強みと言えるでしょう。

【実践】バーチャルオフィス登記のデメリットを回避する具体的な対策

バーチャルオフィスの登記には確かに注意すべき点がありますが、それらは決して乗り越えられない壁ではありません。

事前にデメリットを理解し、正しい対策を講じることで、リスクを最小限に抑え、メリットを最大限に活用することが可能です。

ここでは、多くの起業家が直面する課題をクリアするための具体的な方法を解説します。

銀行口座開設の審査を通過するための準備

バーチャルオフィス利用者が法人口座開設で最もつまずきやすいポイントです。
しかし、以下の準備を徹底することで、審査通過の可能性を大幅に高めることができます。

重要なのは「事業の実態」と「事業への本気度」を客観的な資料で示すことです。

審査担当者は、犯罪収益移転防止法(マネーロンダリング対策)の観点から、実態のないペーパーカンパニーではないかを厳しくチェックしています。
その懸念を払拭するための準備を怠らないようにしましょう。

  • 事業計画書を詳細に作成する
    なぜバーチャルオフィスで十分なのか、事業内容は何か、どのように収益を上げるのか、将来の展望などを具体的に記載します。特に「なぜ物理的なオフィスが不要なのか」をITを活用したリモート完結型のビジネスモデルであることなど、合理的に説明できるように準備しましょう。
  • 固定電話番号を取得する
    連絡先が携帯電話番号だけだと、事業の信頼性が低いと見なされる傾向があります。月額数百円から利用できるIP電話サービスなどを活用し、市外局番(例:03)から始まる固定電話番号を取得しましょう。名刺やウェブサイトにも記載することで、信頼性が向上します。
  • 事業用のウェブサイト(ホームページ)を用意する
    現代のビジネスにおいて、公式ウェブサイトは事業の顔です。会社概要、事業内容、サービス紹介、代表者プロフィール、プライバシーポリシー、問い合わせ先(取得した固定電話番号も記載)などを網羅した、しっかりとしたウェブサイトを作成してください。無料の作成ツールでも構いませんが、独自ドメインを取得することをおすすめします。
  • 提出書類を完璧に揃える
    履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、定款、代表者の本人確認書類、事業内容がわかる資料など、銀行から求められる書類は事前にリストアップし、不備なく準備します。少しでも不明な点があれば、事前に銀行へ問い合わせましょう。
  • バーチャルオフィスの契約書を提示する
    事務所の賃貸借契約書の代わりに、バーチャルオフィスの利用契約書を提出します。住所を借りている正当な契約者であることを証明する重要な書類です。

融資審査で不利にならないためのポイント

日本政策金融公庫の新創業融資制度などを利用する際、バーチャルオフィスであることがマイナスに働く可能性はゼロではありません。
しかし、これも口座開設と同様に、事業の信頼性と計画の具体性でカバーすることが可能です。

  • 自己資金を十分に用意する
    融資審査では自己資金の額が非常に重視されます。希望融資額の3分の1から半分程度の自己資金を準備しておくのが理想です。コツコツと貯めてきた資金は、事業への熱意と計画性の証明になります。
  • 創業計画書(事業計画書)を徹底的に作り込む
    なぜバーチャルオフィスで事業を始めるのか、その選択が事業計画全体においていかに合理的であるかを明確に説明する必要があります。「初期費用を抑え、その分を広告宣伝費や仕入れに回す」といった具体的な資金使途を示すと、説得力が増します。将来的に事業が拡大した際のオフィス移転計画などを盛り込むのも有効です。
  • 事業実績を示す資料を用意する
    もし可能であれば、融資申込前に小規模でも取引実績を作っておきましょう。クラウドソーシングでの受注履歴、顧客との契約書や請求書、試作品など、事業がすでに動き出していることを示す具体的な証拠は、審査担当者に安心感を与えます。
  • 専門家のサポートを受ける
    税理士や中小企業診断士、認定支援機関などに創業計画書の作成を相談するのも一つの手です。専門家による客観的な視点が入ることで、計画の精度が格段に向上し、金融機関からの信頼も得やすくなります。

許認可が必要な場合の代替案とは

特定の業種では、事業所の独立性や専用スペースが法律で定められており、バーチャルオフィスでは許認可が取得できません。
しかし、諦める必要はありません。以下のような代替案を検討しましょう。

最も重要なのは、法人を設立する前に、事業に必要な許認可の要件を管轄の行政庁(保健所、都道府県庁など)や行政書士に必ず確認することです。

登記が完了してから許認可が取れないことが判明すると、本店所在地の変更登記などで余計な時間と費用がかかってしまいます。

以下に、代表的な業種と代替案をまとめました。

許認可が下りない代表的な業種問題となる要件(一例)具体的な代替案
人材派遣業・職業紹介事業・事業所の面積が原則20㎡以上
・個人情報保持のための独立した構造
・レンタルオフィスの個室プランを契約する
・シェアオフィスの専用ルームを利用する
古物商・営業を営むための独立した管理スペース(営業所)が必要・自宅を営業所として申請する(賃貸の場合は規約を確認)
・レンタルオフィスの個室を営業所とする
建設業・業務を行うための独立した事務所(事務机、電話、PC等)が必要・レンタルオフィスやシェアオフィスの個室プランを利用する
・自宅兼事務所として申請する
不動産業・継続的に業務を行える施設と、独立した出入り口が必要・専用区画が確保できるレンタルオフィスを契約する
・自宅を事務所として利用する(要件確認が必要)
士業(弁護士、税理士、行政書士など)・職務上の守秘義務を保持できる独立した執務スペースが必要・士業向けのレンタルオフィスを利用する
・シェアオフィスのプライベートオフィスを契約する

これらの代替案を利用する場合でも、契約前にそのオフィスで許認可が取得可能か、運営会社や行政庁に確認することが不可欠です。

まずは低コストなバーチャルオフィスで事業の準備を進め、許認可申請のタイミングでレンタルオフィスの個室プランに切り替える、といった段階的なアプローチも有効な戦略です。

登記で失敗しないバーチャルオフィスの選び方

バーチャルオフィスでの法人登記にはデメリットもありますが、その多くは「どのバーチャルオフィスを選ぶか」によって回避・軽減することが可能です。

価格の安さだけで安易に選んでしまうと、後々「銀行口座が作れない」「融資が受けられない」といった深刻な問題に直面しかねません。

ここでは、登記で失敗しないために、契約前に必ずチェックすべき重要なポイントを具体的に解説します。

法人登記の実績が豊富か確認する

法人登記にバーチャルオフィスを利用する起業家は年々増加しており、運営会社側も多くのノウハウを蓄積しています。

登記を前提とした利用実績が豊富な会社は、金融機関や行政の動向を把握しており、トラブルを未然に防ぐためのサポート体制が整っている可能性が高いと言えます。

公式サイトで「法人登記可能」と明記されているのはもちろんのこと、これまでの登記実績や利用者の声を必ず確認しましょう。

運営歴と会員数で信頼性を判断する

信頼性を測る具体的な指標として「運営歴の長さ」と「累計会員数」が挙げられます。一般的に、運営歴が10年以上、会員数が数千社を超えるようなバーチャルオフィスは、長年にわたり安定したサービスを提供し、多くの起業家から支持されてきた証拠です。
長く運営している会社ほど、過去のトラブル事例やその解決策に関する知見が豊富であり、万が一の際にも的確なアドバイスが期待できます。

銀行紹介制度やサポートの有無を調べる

バーチャルオフィス登記における最大の障壁が、法人口座の開設です。
この問題をクリアするために最も有効なのが、運営会社が提供する「銀行紹介制度」です。
これは、バーチャルオフィス運営会社が提携する金融機関を紹介してくれるサービスで、利用することで口座開設の審査がスムーズに進む可能性が高まります。

メガバンクとの提携実績は重要な判断材料

紹介制度の中でも、特に三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行といったメガバンクとの提携実績があるかどうかは、非常に重要な判断材料です。
審査が厳しいとされるメガバンクから「紹介するに足るパートナー」として認められている事実は、そのバーチャルオフィスの住所や運営体制が高い信頼性を有していることの証明になります。
公式サイトに提携金融機関名が具体的に記載されているか、必ずチェックしましょう。

事業に必要なサービスが揃っているか

登記だけでなく、その後の事業運営を見据えたサービス内容の確認も不可欠です。

事業の成長段階や業務内容に合わせて、必要なサポートが受けられるかしっかりと見極めましょう。

郵便物管理と電話応対の質

法人登記をすると、税務署や法務局、取引先などから重要な郵便物が届きます。
郵便物の受け取りや転送の頻度(例:週1回、月2回、都度転送など)、転送方法、通知のタイミング(メールで即時通知など)が、ご自身の事業スタイルに合っているかを確認してください。
また、オプションで電話転送や秘書代行サービスを利用できれば、顧客からの電話を取りこぼすことがなくなり、事業の実態を示す上でも有利に働くことがあります。

物理的なスペースの利用可否

バーチャルオフィスであっても、顧客との商談や打ち合わせで物理的なスペースが必要になる場面は少なくありません。
登記している住所と同じ建物内に、時間単位で利用できる会議室や応接室が併設されていると、対外的な信用度も高まります。
また、一部の許認可申請では事業所の実地調査が行われるケースもあるため、会議室の有無は重要なチェックポイントです。

料金体系の透明性と契約内容

月額料金の安さだけで選ぶのは危険です。基本料金以外にどのような費用が発生するのか、トータルコストを把握することが重要です。

契約後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、料金体系の透明性をしっかり確認しましょう。

契約前には、以下の項目を必ずチェックし、不明な点は事前に問い合わせて解消しておくことが大切です。

チェック項目確認すべきポイント
初期費用入会金、保証金、事務手数料など、契約時に必要な総額はいくらか。
月額基本料金基本料金に含まれるサービス内容(住所利用、法人登記、郵便物受取など)。
追加料金(オプション)郵便物転送(手数料や実費)、電話転送、会議室利用など、オプションごとの料金。
契約期間と解約条件最低契約期間の有無、解約時の違約金の有無、解約手続きの方法。

特に、郵便物の転送費用が「月額料金込み」なのか「実費+手数料」なのかで、月々の支払額は大きく変わります。

目先の安さだけでなく、ご自身の事業計画に合ったトータルコストで判断することが、失敗しないための鍵です。

利用規約にも必ず目を通し、禁止されている業種や利用方法がないかも確認しておきましょう。

まとめ

本記事では、バーチャルオフィスで法人登記する際のデメリットと、その具体的な対策について解説しました。

バーチャルオフィスでの登記は、銀行の法人口座開設が難しくなったり、日本政策金融公庫などからの融資で不利になったりする可能性があるという明確なデメリットが存在します。
特に、メガバンクや地方銀行では事業実態の確認が厳しく、口座開設を断られるケースは少なくありません。

しかし、これらのデメリットは事前の対策によって十分に回避・軽減することが可能です。

例えば、法人口座開設では、事業計画書を綿密に作り込み、固定電話番号を用意する、あるいはネット銀行を選択肢に入れるといった準備が有効です。

また、融資に関しても、自己資金を十分に用意し、説得力のある事業計画を提示することが重要となります。

一方で、バーチャルオフィスには「初期費用を大幅に削減できる」「都心一等地の住所を利用できる」といった、デメリットを上回る大きなメリットもあります。

結論として、バーチャルオフィスでの登記が失敗に終わるかどうかは、デメリットを正しく理解し、適切な対策を講じられるかにかかっています。

これから事業を始める方は、本記事で紹介した対策を参考に、法人登記の実績が豊富で銀行紹介制度などのサポートが充実したバーチャルオフィスを選び、スムーズな事業スタートを切ってください。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
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