【税理士監修】資本金が多い、少ない、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較!知らないと損する注意点とは?

会社の資本金をいくらに設定すべきか、なんとなく決めて後悔したくないとお考えではありませんか?

資本金は多い方が良いと思われがちですが、実は一概にそうとは言えません。

この記事では、税理士監修のもと、資本金が多い場合と少ない場合のメリット・デメリットを、信用力・融資・税金(法人住民税や消費税)・許認可など多角的な視点から徹底比較します。

最後まで読めば、あなたの事業計画に最適な資本金額の目安が分かり、会社設立後の後悔を防ぐための具体的な判断基準が明確になります。

そもそも資本金とは?会社経営における役割を解説

会社を設立しようと考えたとき、多くの人が悩むのが「資本金」をいくらに設定するかです。

2006年の会社法施行により、理論上は資本金1円からでも株式会社を設立できるようになりました。

しかし、資本金の額は会社の信用力や経営の安定性に直結するため、安易に決めるのは非常に危険です。

この章では、資本金が会社経営においてどのような役割を担っているのか、その本質的な意味を2つの側面から詳しく解説します。

メリット・デメリットを比較する前に、まずはこの基本をしっかりと押さえておきましょう。

会社の体力と信用度を示す指標

資本金の第一の役割は、その会社の「財務的な体力」と「社会的な信用度」を示す客観的な指標となることです。

資本金は、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)に記載され、誰でも法務局で閲覧できます。
そのため、取引先や金融機関、顧客などが、その会社と安全に取引できるかどうかを判断する際の重要な材料となります。

例えば、資本金が1円の会社と1,000万円の会社があった場合、多くの人は後者の方が「経営基盤がしっかりしていて、すぐに倒産するリスクは低いだろう」と感じるはずです。
このように、資本金の額は、名刺や会社案内だけでは伝わらない「会社の信頼性」を外部に示す、いわば会社の顔のような役割を果たします。

会計上、資本金は貸借対照表(バランスシート)の「純資産の部」に計上される「自己資本」の一部です。

自己資本とは、金融機関からの借入金(他人資本・負債)とは異なり、返済する必要がない会社の純粋な資産を指します。
この自己資本が厚いほど、経営の安定性が高いと評価されます。

分類主な内容特徴
自己資本(純資産)資本金、資本準備金、利益剰余金など返済義務がない、会社の純粋な資産。会社の「体力」を示す。
他人資本(負債)金融機関からの借入金、買掛金など返済義務がある資金。多すぎると財務状況の悪化要因となる。

事業を運営するための元手となる資金

資本金の第二の役割は、会社設立後の事業を実際に運営していくための「元手(運転資金)」となることです。

会社を設立しても、すぐに売上が立って利益が出るとは限りません。

特に事業開始直後は、売上が入金されるまでの間、事務所の家賃、従業員の給与、商品の仕入れ代金、広告宣伝費など、さまざまな支払いが発生します。

資本金は、こうした事業が軌道に乗るまでの期間を支えるための、いわば「事業のスターター資金」です。
この資金が不足していると、黒字経営にもかかわらず支払いが滞ってしまう「黒字倒産」のリスクも高まります。

したがって、資本金は設立時の見栄えのためだけでなく、現実的な事業運営のために不可欠な資金なのです。

ここで注意したいのが、「役員借入金」との違いです。資本金が不足した場合、社長が個人のお金を会社に貸し付ける「役員借入金」で補うケースがあります。
しかし、これはあくまで会社から見れば「借金(負債)」です。

役員借入金が多いと、金融機関からの融資審査で「自己資金が準備できない会社」と見なされ、評価が下がる可能性があります。

健全な財務体質をアピールするためにも、事業に必要な資金はできるだけ資本金として準備することが望ましいと言えます。

項目資本金役員借入金
会計上の分類純資産(自己資本)負債(他人資本)
返済義務なしあり
信用評価への影響プラスに働くマイナスに働く可能性がある

資本金が多い場合のメリット

会社の設立時に資本金を多く設定することには、多くのメリットが存在します。

会社の信用力や資金調達能力に直結し、事業の安定性と成長性を大きく左右する可能性があります。

ここでは、資本金が多い場合に得られる具体的な4つのメリットを詳しく解説します。

会社の社会的な信用力が高まる

資本金の額は、会社の「体力」や「経営基盤の安定性」を示す客観的な指標です。

会社の資本金額は登記事項証明書(登記簿謄本)に記載され、誰でも閲覧できるため、取引先や金融機関、さらには求職者までもが企業の信頼性を判断する材料として利用します。

例えば、新しい取引先と契約を結ぶ際、相手企業は与信調査の一環として資本金額を確認することが一般的です。

資本金が潤沢であれば、「しっかりとした資金力を持って事業に取り組んでいる信頼できる会社」という印象を与え、取引をスムーズに進めやすくなります。

特に、大企業を相手にするビジネスでは、一定額以上の資本金がなければ取引の土台に乗れないケースも少なくありません。

また、人材採用の場面においても、資本金の多さは応募者に対する安心感につながり、優秀な人材を確保しやすくなるという副次的な効果も期待できます。

金融機関からの融資が受けやすくなる

事業拡大や設備投資のために資金調達が必要になった際、資本金の多さは大きなアドバンテージとなります。

銀行や信用金庫、日本政策金融公庫といった金融機関は、融資の審査において「自己資金の額」を極めて重視します。資本金は、その代表的な自己資金と見なされます。

金融機関は返済能力を厳しく審査するため、潤沢な自己資金の証明となる多い資本金は、融資審査において非常に有利な材料となるのです。

自己資金が多ければ多いほど、会社の財務基盤が安定していると評価され、返済不能に陥るリスクが低いと判断されます。
これにより、希望する融資額が承認されやすくなるだけでなく、より有利な金利条件を引き出せる可能性も高まります。

特に、実績の少ない創業期に受ける「新創業融資制度」などでは、自己資金額が融資実行の可否を左右する重要な要件となっているため、設立時の資本金額の設定は将来の資金調達戦略にも深く関わってきます。

大規模な事業や設備投資に対応できる

資本金は、会社が事業を運営していくための元手となる資金です。

資本金が多ければ、それだけ手元資金に余裕がある状態で事業をスタートできます。

この余裕資金は、事業の立ち上げに不可欠な初期投資に充当できます。

例えば、製造業であれば高額な生産設備の導入、IT企業であれば高性能なサーバーの購入、店舗型ビジネスであれば内装工事や什器の調達など、大規模な投資を自己資金で賄うことが可能になります。
これにより、借入に頼らずに事業基盤を固めることができ、健全な財務状態でスタートを切れます。

さらに重要なのは、売上が安定して計上されるまでの運転資金としての役割です。

事業が軌道に乗るまでの数ヶ月間の家賃、人件費、仕入れ費用などを十分に確保できるため、資金ショートのリスクを抑えつつ、計画通りに事業を推進できます。

資金繰りに追われることなく、本来注力すべき事業活動に集中できる環境を整えられる点は、経営者にとって大きな精神的支柱となるでしょう。

許認可が必要な業種の要件をクリアしやすい

事業内容によっては、事業を開始するにあたり、国や都道府県から「許認可」を得る必要があります。
そして、これらの許認可の中には、取得要件として一定額以上の「財産的基礎」が法律で定められているものがあります。

この財産的基礎の要件は、「基準資産額」や「純資産額」として定められていることが多く、資本金はこの要件を満たすための最も直接的な証明となります。
つまり、特定の業種でビジネスを始めるには、定められた額以上の資本金を用意することが事業開始の絶対条件となるのです。

以下に、資本金(または財産的基礎)の要件が定められている許認可の代表例を挙げます。

業種許認可の種類主な財産要件(一例)
建設業一般建設業許可自己資本の額が500万円以上であること 等
建設業特定建設業許可資本金2,000万円以上、かつ自己資本4,000万円以上であること 等
人材派遣業一般労働者派遣事業許可資産総額から負債総額を控除した額(基準資産額)が2,000万円以上であること 等
職業紹介業有料職業紹介事業許可資産総額から負債総額を控除した額(基準資産額)が500万円以上であること 等
旅行業第1種旅行業基準資産額が3,000万円以上であること

これらの業種で起業を考えている場合、設立当初から要件を満たす資本金額を設定しなければ、事業を始めることすらできません。

自社が参入したい業界の許認可要件を事前にしっかりと確認することが不可欠です。

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資本金が多い場合のデメリット

資本金が多いことは、会社の信用力を高めるなど多くのメリットがある一方で、特に設立時や設立後のコスト面で無視できないデメリットも存在します。

メリットだけに目を向けて資本金を高く設定してしまうと、後々の経営を圧迫する要因になりかねません。

ここでは、資本金を多く設定した場合に生じる具体的なデメリットを3つの観点から詳しく解説します。

設立時の登録免許税が高くなる

会社を設立する際には、法務局へ登記申請を行う必要があり、その際に「登録免許税」という税金を納めなければなりません。

株式会社の場合、この登録免許税は「資本金の額 × 0.7%」または「15万円」のいずれか高い方の金額と定められています。

つまり、資本金が約2,143万円(15万円 ÷ 0.7%)までは登録免許税は最低額の15万円ですが、それを超えると資本金額に比例して税額が上がっていくことになります。

例えば、資本金を3,000万円に設定した場合、登録免許税は21万円(3,000万円 × 0.7%)となり、最低額よりも6万円も多く支払う必要があります。

以下の表は、資本金額による登録免許税の違いをまとめたものです。

資本金額登録免許税の計算納付税額
500万円500万円 × 0.7% = 3.5万円 → 15万円15万円
1,000万円1,000万円 × 0.7% = 7万円 → 15万円15万円
2,500万円2,500万円 × 0.7% = 17.5万円 → 17.5万円17.5万円
5,000万円5,000万円 × 0.7% = 35万円 → 35万円35万円

このように、資本金を多く設定すると、その分だけ会社設立時の初期費用が増加します。

事業開始前の段階で少しでも手元資金を残しておきたい創業者にとって、このコスト増は大きな負担となり得ます。

法人住民税の均等割が高くなる可能性がある

法人住民税は、「法人税割」と「均等割」の2つで構成されています。
このうち「均等割」は、会社の所得(利益)が赤字であっても、資本金等の額や従業員数に応じて必ず支払わなければならない固定費のような税金です。

そして、この均等割の税額は、資本金が1,000万円を超えるかどうかを境に大きく変動します。

例えば、東京都23区内に事業所があり、従業員数が50人以下の場合、資本金が1,000万円以下であれば均等割は年間7万円ですが、1,000万円を超えると18万円に跳ね上がります。

以下の表で、資本金等の額による均等割の税額の違いを確認してみましょう(東京都・従業員50人以下の場合)。

資本金等の額法人住民税 均等割(年額)差額(1,000万円以下の場合と比較)
1,000万円以下7万円
1,000万円超 1億円以下18万円+11万円
1億円超 10億円以下29万円+22万円

年間11万円の差は、10年間で110万円ものコスト増につながります。
特に、事業がまだ軌道に乗っていない設立初期の段階では、この固定費の増加が経営の足かせになる可能性があります。

信用力向上のために安易に資本金を1,000万円以上に設定すると、長期的に見て税負担が増加するというデメリットを負うことになるのです。

自己資金を多く準備する必要がある

資本金は、基本的に発起人(創業者)が出資する自己資金です。金融機関からの借入金とは異なり、返済の必要がない会社の純資産となります。
そのため、資本金を多く設定するということは、会社設立時にそれだけ多額の現金を個人資産から会社に移す必要があることを意味します。

例えば、資本金を2,000万円に設定する場合、個人の預貯金などから2,000万円を準備し、会社の口座に振り込まなければなりません。
これにより、創業者個人の手元資金が大幅に減少してしまうリスクがあります。

事業は必ずしも計画通りに進むとは限りません。

万が一、売上が想定よりも伸び悩んだり、予期せぬトラブルが発生したりした場合に備え、創業者個人の生活費や緊急時のための資金を確保しておくことは極めて重要です。

自己資金の大部分を資本金として投じてしまうと、こうした不測の事態に対応できなくなり、事業継続だけでなく個人の生活まで脅かされる危険性があります。

事業の元手と個人の備えのバランスを慎重に検討することが求められます。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金が少ない場合のメリット

資本金を少なく設定することには、特に会社設立の初期段階において大きなメリットがあります。

自己資金が潤沢でない場合や、リスクを抑えて事業を始めたい創業者にとって、資本金を低く抑える選択は非常に魅力的です。

ここでは、資本金が少ない場合の具体的なメリットを3つの側面から詳しく解説します。

会社設立時の費用負担を軽減できる

会社を設立する際には、資本金そのものとは別に、法務局へ支払う「登録免許税」という税金が発生します。
この登録免許税の額は資本金の額によって変動するため、資本金を少なく設定することで、会社設立にかかる初期費用(イニシャルコスト)を直接的に抑えることが可能です。

株式会社の場合、登録免許税は「資本金の額 × 0.7%」で計算されますが、この計算結果が15万円に満たない場合は、一律で最低額の15万円が課されます。

つまり、資本金が約2,142万円以下であれば、登録免許税は最低額の15万円で済みます。

例えば、資本金を100万円で設立する場合も、1,000万円で設立する場合も、登録免許税は同額の15万円です。

しかし、資本金を3,000万円にすると登録免許税は21万円(3,000万円 × 0.7%)となり、負担が増加します。
このように、資本金を低く設定することは、設立時の金銭的なハードルを下げる上で非常に有効な手段です。

資本金の額計算式登録免許税額
300万円300万円 × 0.7% = 2.1万円 → 最低額を適用15万円
1,000万円1,000万円 × 0.7% = 7万円 → 最低額を適用15万円
3,000万円3,000万円 × 0.7% = 21万円21万円

特に、自己資金をできるだけ運転資金に回したい創業期において、設立費用を最小限に抑えられるメリットは計り知れません。

手軽にスモールスタートが可能

資本金が少ないということは、少ない自己資金で事業を開始し、リスクを抑えながらビジネスを成長させられる「スモールスタート」が可能になることを意味します。

多額の資金調達に奔走することなく、迅速に事業を立ち上げられる点は大きな利点です。

特に、以下のような業種では、多額の初期投資を必要としないため、少ない資本金での起業が適しています。

  • IT・Webサービス(アプリ開発、Web制作など)
  • コンサルティング業
  • デザイン、ライティングなどのクリエイティブ業
  • オンラインストア(在庫を持たないドロップシッピングなど)

これらのビジネスは、大きな設備投資や仕入れが不要なため、まずは少ない資本金で事業を開始し、利益が出始めたら増資を検討するという段階的な成長戦略を描きやすくなります。
また、万が一事業がうまくいかなかった場合でも、投下した自己資本が少ないため、精神的・金銭的なダメージを最小限に抑え、事業の方向転換や撤退の判断がしやすくなるという側面もあります。

税制上の優遇措置を受けやすい

資本金を一定額未満に設定することで、税制上のさまざまな優遇措置を受けられる可能性があります。
これは、設立後のランニングコストを削減し、会社のキャッシュフローを改善する上で非常に重要なメリットです。

消費税の納税義務が免除される

資本金1,000万円未満で会社を設立した場合、原則として設立1期目と2期目の消費税の納税が免除されます。
これは「免税事業者」という制度によるもので、創業期の資金繰りが厳しい時期において、預かった消費税を納税せずに済むため、手元資金に大きな余裕が生まれます。

ただし、設立1期目の上半期(特定期間)の課税売上高と給与支払額のいずれもが1,000万円を超えた場合は、2期目から課税事業者となるため注意が必要です。
また、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始に伴い、取引先の都合で「適格請求書発行事業者」に登録する場合は、資本金にかかわらず課税事業者となる点も理解しておく必要があります。

法人住民税の均等割が最低額になる

法人住民税は、法人の所得に応じて課される「法人税割」と、所得にかかわらず(赤字でも)支払う義務のある「均等割」で構成されています。
この均等割の額は、資本金等の額と従業員数によって決まります。

資本金が1,000万円以下で、従業員数が50人以下の場合、均等割の額は多くの自治体で最低額の年額7万円(都道府県民税2万円+市町村民税5万円)となります。

資本金が1,000万円を超えると均等割の額が上がるため、資本金を低く設定することは、毎年必ず発生する税負担を抑えることにつながります。

資本金等の額従業員数50人以下従業員数50人超
1,000万円以下7万円14万円
1,000万円超 1億円以下18万円20万円
1億円超 10億円以下29万円53万円

このように、資本金を1,000万円未満に抑えることは、消費税と法人住民税の両面で税務上のメリットを享受できる、非常に合理的な選択肢と言えるでしょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金が少ない場合のデメリット

会社設立時のハードルを下げ、スモールスタートを可能にする少ない資本金ですが、その手軽さの裏には看過できないデメリットも存在します。
特に、事業の成長や継続性を見据えた場合、資本金の少なさが足かせとなる場面も少なくありません。

ここでは、資本金が少ない場合に起こりうる具体的なデメリットを4つの観点から詳しく解説します。

対外的な信用力が低く見られがち

資本金の額は、会社のウェブサイトや会社概要、登記簿謄本(登記事項証明書)で誰でも確認できる情報です。
そのため、資本金の額は会社の「第一印象」を左右する重要な要素となります。

資本金が極端に少ない(例えば1円や数万円など)場合、取引先や顧客から以下のような懸念を抱かれる可能性があります。

  • 「事業に対する本気度が低いのではないか?」
  • 「すぐに倒産してしまうリスクがあるのではないか?」
  • 「責任をもって取引を完遂する体力がないのではないか?」

特に、大企業との取引や、継続的な関係性が求められるBtoBビジネスにおいては、与信調査の段階で資本金額が一定の基準に達していないという理由だけで、取引の候補から外されてしまうケースも珍しくありません

社会的な信用は事業の基盤です。資本金の少なさが、ビジネスチャンスを逃す原因になり得ることは、大きなデメリットと言えるでしょう。

融資の審査で不利になることがある

事業の拡大や設備投資のために金融機関からの融資を検討する際、資本金の額は審査における重要な判断材料の一つとなります。

金融機関は融資の可否を判断するにあたり、「自己資金をどれだけ準備しているか」を重視します。

資本金は、その代表的な自己資金と見なされます。

資本金が少ないということは、経営者自身の事業へのコミットメントが低い、あるいは会社の経営基盤が脆弱であると判断されやすいことを意味します。

結果として、以下のような状況に陥る可能性があります。

  • 希望する金額の融資が受けられない(減額される)
  • そもそも融資の審査に通らない
  • より厳しい融資条件を提示される

例えば、日本政策金融公庫の新創業融資制度などでは、自己資金要件は緩和傾向にありますが、依然として自己資金額は審査で重視される項目です。

一般的に「自己資金の2〜3倍程度」が融資額の一つの目安とされることもあり、資本金が少ないと、必然的に借入可能額も少なくなってしまいます。

将来的な資金調達の選択肢を狭めないためにも、融資を視野に入れるなら、ある程度の資本金を用意しておくことが賢明です。

資金ショートのリスクが高まる

資本金は、会社設立時の初期費用だけでなく、事業が軌道に乗るまでの運転資金としても機能します。

いわば、会社の「体力」そのものです。

資本金が少ないということは、この体力が乏しい状態でのスタートを意味し、予期せぬ事態が発生した際に資金ショート(資金繰りの悪化)に陥るリスクが格段に高まります

会社設立直後は、売上が安定しなかったり、売掛金の回収が遅れたりすることも少なくありません。

そのような状況で、急な追加広告費や設備の故障といった想定外の出費が重なると、手元の現金はあっという間に底をついてしまいます。

利益が出ていても現金がなければ、仕入れ代金や従業員の給与、オフィスの家賃などを支払えなくなり、「黒字倒産」という最悪の事態を招きかねません。

少なくとも3ヶ月、できれば6ヶ月分の運転資金を資本金として用意しておくことが、こうしたリスクを回避するための重要な備えとなります。

許認可が取得できない場合がある

事業内容によっては、事業を行うために国や都道府県から「許認可」を得る必要があります。
そして、これらの許認可の中には、取得の要件として一定額以上の資本金(または純資産額)が法律で定められているものがあります。

もし、この要件を満たしていなければ、そもそも事業を合法的にスタートさせることができません。

資本金要件が定められている許認可の代表例は以下の通りです。

業種許認可の種類必要な資本金・財産的基礎
建設業一般建設業許可自己資本の額が500万円以上であること 等
建設業特定建設業許可資本金2,000万円以上、かつ自己資本4,000万円以上であること 等
労働者派遣事業一般労働者派遣事業許可基準資産額が2,000万円以上であること 等
旅行業第一種旅行業基準資産額が3,000万円以上であること
有料職業紹介事業有料職業紹介事業許可基準資産額が500万円以上であること 等

上記はあくまで一例であり、他にも細かな要件が定められています。

これから始めようとする事業に許認可が必要かどうか、そしてその要件に資本金に関する規定がないかを、会社設立前に必ず管轄の行政庁へ確認することが不可欠です。

準備不足で事業開始が遅れるといった事態を避けるためにも、事前のリサーチは徹底しましょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

【税理士が解説】最適な資本金額の決め方のポイント

これまで資本金が多い場合と少ない場合のメリット・デメリットをそれぞれ見てきました。

では、これから会社を設立するにあたり、自社にとって最適な資本金は一体いくらなのでしょうか。

結論から言うと、「すべての会社にとってこの金額が正解」という魔法の数字は存在しません。

しかし、事業計画や将来の展望に合わせて、最適な資本金額を導き出すための重要な判断基準は存在します。

ここでは、税理士の視点から、後悔しない資本金額を決めるための3つの重要なポイントを具体的に解説します。

初期費用と3ヶ月から6ヶ月分の運転資金を目安にする

資本金の最も重要な役割は、会社設立直後の資金繰りを安定させ、事業を軌道に乗せるための体力を確保することです。

会社を設立しても、すぐに売上が立って利益が出るとは限りません。

売上が安定するまでの数ヶ月間は、たとえ赤字であっても家賃や人件費などの固定費を支払い続ける必要があります。
この期間を乗り切るための資金が、資本金なのです。

そこで、資本金額を決める上での一つの実践的な目安となるのが、「事業開始に必要な初期費用」と「最低3ヶ月から6ヶ月分の運転資金」を合計した金額です。

資本金額の計算式

資本金の目安額 = 初期費用(イニシャルコスト) + (1ヶ月あたりの運転資金 × 3~6ヶ月)

具体的にどのような費用が含まれるのか、以下の表で確認しましょう。

費用の種類主な費用の内訳例
初期費用
(イニシャルコスト)
・法人設立費用(定款認証手数料、登録免許税など)
・事務所、店舗の契約費用(敷金、礼金、保証金、仲介手数料)
・内装工事費、設備工事費
・PC、デスク、複合機などの什器・備品購入費
・ウェブサイト制作費
・会社設立当初の広告宣伝費
運転資金
(ランニングコスト)
・事務所、店舗の家賃
・役員報酬、従業員の給与、社会保険料
・商品の仕入れ費用、原材料費
・水道光熱費、通信費
・継続的な広告宣伝費、販売促進費
・その他諸経費(交通費、消耗品費など)

事業が軌道に乗るまでの期間は業種やビジネスモデルによって異なりますが、一般的に最低でも3ヶ月、余裕を持つなら6ヶ月程度の期間を見込んでおくのが賢明です。

手元の資金が底をつき、売上はあるのに支払いができなくなる「黒字倒産」のリスクを避けるためにも、この期間の運転資金を資本金として準備しておくことは、安定した会社経営の第一歩と言えるでしょう。

許認可の要件を確認する

ご自身の事業が、特定の許認可を必要とする業種である場合、資本金額の決定はさらに重要になります。

なぜなら、許認可を取得するための要件として、一定額以上の資本金(または財産的基礎)が法律で定められている場合があるからです。

この要件を満たしていなければ、そもそも事業を開始することができません。

会社設立手続きを進める前に、必ず自社の事業に必要な許認可の有無と、その要件を確認しましょう。

以下に、資本金要件が定められている代表的な業種をいくつかご紹介します。

業種許認可の種類主な財産的基礎要件
建設業一般建設業許可自己資本の額が500万円以上であること 等
建設業特定建設業許可資本金の額が2,000万円以上、かつ自己資本の額が4,000万円以上であること 等
労働者派遣事業一般労働者派遣事業許可資産総額から負債総額を控除した額(純資産額)が2,000万円以上であること 等
有料職業紹介事業有料職業紹介事業許可資産総額から負債総額を控除した額(純資産額)が500万円以上であること 等
旅行業第一種旅行業登録基準資産額が3,000万円以上であること

注意点として、要件は「資本金」だけでなく、「自己資本額」や「純資産額」、「基準資産額」といった言葉で定められている場合があります。
これらは貸借対照表上の金額を指し、単純な資本金の額とは異なるケースもあるため、内容を正確に理解する必要があります。

ご自身の事業にどの要件が適用されるか、最新の情報は必ず管轄の行政庁に問い合わせるか、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

資本金1000万円未満で消費税の免税メリットを享受する

税務上の観点から資本金額を考える上で、最もインパクトが大きいのが「1000万円の壁」です。

原則として、資本金1000万円未満で設立された法人は、設立第1期目と第2期目の消費税の納税が免除されるという大きなメリットがあります(免税事業者)。

設立当初は資金繰りが厳しいケースが多いため、売上に対して約10%かかる消費税の納税負担がないことは、キャッシュフローに非常に良い影響を与えます。
そのため、多くのスタートアップ企業や中小企業が、この税制優遇を活用するために資本金を1000万円未満に設定しています。

ただし、このメリットを享受するにはいくつかの注意点があります。

設立1期目の前半の課税売上高にも注意

資本金を1000万円未満にしても、必ず2期目も免税事業者になれるとは限りません。
設立1期目の開始日から6ヶ月間(これを「特定期間」といいます)の課税売上高が1000万円を超え、かつ、その期間の給与等支払総額も1000万円を超えた場合、設立2期目から消費税の課税事業者となります。
急成長が見込まれる事業の場合は、この点も念頭に置いておく必要があります。

インボイス制度開始による影響

2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)も、この判断に影響を与えます。
自社が免税事業者のままだと、インボイス(適格請求書)を発行できません。
すると、取引先(買手側)が課税事業者である場合、その取引先は仕入税額控除ができないため、取引上不利になる可能性があります。

そのため、主な取引先が法人などの課税事業者である場合は、設立当初からあえて課税事業者(適格請求書発行事業者)になる選択も視野に入れる必要があります。
消費税の納税負担を避けるメリットと、取引の機会損失リスクを天秤にかけ、自社のビジネスモデルや主要な取引先の状況を考慮して慎重に判断しましょう。

このように、最適な資本金額は、事業の体力、社会的信用、許認可、そして税制メリットという複数の側面から総合的に判断する必要があります。
迷った場合は、税理士などの専門家に相談し、自社にとって最善の選択をしてください。

まとめ

本記事では、資本金が多い場合と少ない場合のメリット・デメリットを比較解説しました。

資本金は会社の信用度や体力を示す重要な指標ですが、多ければ良いというものではありません。

設立時の費用や税負担、将来の事業展開などを総合的に考慮する必要があります。最適な資本金額は、事業開始に必要な初期費用と3ヶ月から6ヶ月分の運転資金を目安にしつつ、許認可の要件や消費税の免税といった観点からも検討することが成功への鍵となります。

自社の事業計画に合った金額を慎重に設定しましょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
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