合同会社を設立すると、どのような税金が発生するのか、また株式会社と比べてどちらが税制上有利なのかを知りたいと考えていませんか?
本記事では、合同会社と株式会社の税金の仕組みや負担の違いを詳しく解説し、どちらが節税につながるのかを明確にします。
また、法人税、法人住民税、法人事業税、消費税、社会保険料といった各種税負担を比較し、実際に選択する際に役立つ情報を提供します。
結論として、小規模な事業や柔軟な経営を求める場合には合同会社の方が税負担が軽くなることが多く、一方で大きな資金調達や社外からの信用力を重視するなら株式会社が適しているという点を説明します。
税金だけでなく、経営やコストの視点も踏まえ、最適な選択をサポートします。
合同会社とは?株式会社との違い
合同会社の基本的な仕組み
合同会社(LLC:Limited Liability Company)は、会社法に基づいて設立される法人形態の一つで、株式会社と並び日本国内で広く利用されています。
合同会社は、株式会社とは異なり出資者(社員)が経営にも直接関与することが特徴です。
合同会社は、出資者全員が有限責任であり、個人の財産が会社の債務を負うことはありません。
これは株式会社と同様ですが、合同会社は基本的に株式を発行しないため、所有と経営が一体化しやすい構造になっています。
合同会社は設立手続きが容易で、設立費用も株式会社より安価です。
具体的には、定款の認証が不要であるため、公証役場での手続きを省略でき、登記費用も抑えられます。
株式会社との主な違い
株式会社と合同会社の違いを以下の表に整理しました。
要素 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
所有と経営 | 経営者と出資者が同一 | 出資者(株主)と経営者(取締役)が分離 |
設立費用 | 最低6万円(登録免許税等) | 最低20万円(定款認証・登録免許税等) |
意思決定 | 出資者(社員)全員の合意で決定 | 取締役会や株主総会の決議が必要 |
運営の自由度 | 定款で自由に決められる | 会社法の規定に沿った運営が必要 |
資金調達 | 原則として自己資本や借入に依存 | 株式発行による資金調達が可能 |
社会的信用 | 一般的に株式会社より低い | 信用度が高く、取引先の幅が広い |
合同会社を選ぶメリット
合同会社を選ぶメリットは以下の通りです。
- 設立費用が安い:公証役場での定款認証が不要なため、株式会社よりもコストを抑えられます。
- 経営の自由度が高い:所有と経営が分離していないため、会社の意思決定をシンプルに行うことができます。
- 利益配分を自由に決められる:株式会社は出資比率に応じた配当が必要ですが、合同会社は定款によって自由に利益分配ルールを決めることが可能です。
- ランニングコストが低い:決算公告の義務がないため、株式会社よりも維持費が少なく済みます。
合同会社のデメリット
一方で、合同会社には以下のようなデメリットもあります。
- 社会的信用が低い:日本では合同会社よりも株式会社が一般的であるため、大企業や金融機関との取引では信用度が劣る場合があります。
- 出資者の変更が難しい:原則として全員の同意が必要となるため、簡単に出資者を変更することができません。
- 株式による資金調達ができない:合同会社は株式を発行しないため、ベンチャーキャピタルなどからの出資を受ける際に不利になる場合があります。
- 登記簿で代表者の名前が公開される:株式会社であれば代表取締役の変更が柔軟に可能ですが、合同会社では経営者の氏名が登記簿に記載され、公にされるため注意が必要です。
合同会社の税金の仕組み

法人税の基本
合同会社は法人であるため、法人税が課されます。
法人税は、法人が得た利益に対して課される税金で、個人事業主が支払う所得税とは別の税制が適用されます。
法人税の税率は所得金額に応じて異なります。
中小企業(資本金1億円以下の法人)は軽減税率が適用されるため、課税所得800万円までは低めの税率となっています。
課税所得 | 税率 |
---|---|
800万円以下 | 15% |
800万円超 | 23.2% |
また、合同会社の場合、利益の分配方法が異なることにより、法人税の負担が株式会社と異なる場合があります。
法人住民税と法人事業税
法人税以外にも、地方税として法人住民税や法人事業税がかかります。
法人住民税
法人住民税は都道府県と市区町村に納める税で、「均等割」と「法人税割」の2つの要素で構成されます。
- 均等割:赤字であっても支払いが必要な固定額の税金
- 法人税割:法人税額に応じて計算される税金
合同会社でも、事業規模に応じた法人住民税が課されますが、制度上では株式会社と大きな違いはありません。
法人事業税
法人事業税は、事業を行う法人に課される税金で、所得に応じた税率が適用されます。
こちらも株式会社とほぼ同じ税制が適用されます。
消費税の扱い
合同会社も消費税の納税義務があります。
ただし、以下の条件を満たすことで設立後2年間は消費税の免税事業者となる場合があります。
- 資本金1,000万円未満で設立
- 設立初年度および次年度の課税売上高が1,000万円以下
さらにインボイス制度の開始により、免税事業者である場合に取引先から取引を敬遠される可能性もあるため、事業計画を慎重に考慮する必要があります。
社会保険料の負担
合同会社を設立すると、社会保険の加入義務が発生し、法人として健康保険や厚生年金保険の保険料を負担する必要があります。
社会保険の適用範囲
合同会社では、社員(出資者)=業務執行社員となる場合があります。
この場合、法人の代表者であっても社会保険に加入しなければなりません。
社会保険料は会社と従業員が折半して負担するため、企業負担が大きくなる点に注意が必要です。
たとえば、総支給額が30万円の役員報酬を支払った場合、会社側の負担額の例は以下の通りです。
項目 | 負担額(目安) |
---|---|
健康保険 | 約15,000円 |
厚生年金 | 約26,000円 |
雇用保険 | 約900円 |
合計 | 約41,900円 |
合同会社の役員報酬は、法人の経費として計上できるため法人税の節税につながる点はメリットですが、社会保険料の負担も考慮しながら報酬を決定する必要があります。
株式会社の税金の仕組み

株式会社を設立すると、法人としての税金を納める義務が発生します。
ここでは、株式会社にかかる税金の仕組みについて詳しく解説します。
法人税の計算方法
株式会社の利益に対して課される法人税は、税引前の所得金額をもとに計算されます。
法人税の税率は所得金額によって異なり、中小法人と大企業では適用される税率が違います。
課税所得金額 | 中小法人の法人税率 | 大企業の法人税率 |
---|---|---|
800万円以下 | 15% | 23.2% |
800万円超 | 23.2% | 23.2% |
上記のように中小法人に対しては、800万円以下の課税所得金額に低い税率が適用され、税負担が軽減される制度があります。
法人住民税と法人事業税の違い
株式会社は法人住民税と法人事業税を納める必要があります。
これらは地方税に分類されますが、それぞれの役割には違いがあります。
税目 | 課税対象 | 税率の特徴 |
---|---|---|
法人住民税 | 法人税額に応じた税額 | 一定額+法人税額の一部 |
法人事業税 | 事業所得にかかる税金 | 所得に応じた累進課税 |
法人住民税は資本金の額や法人税の額に応じて一定額が課されます。
一方、法人事業税は事業を行うことで発生する所得に課税されるため、利益が大きいほど税額も高くなります。
消費税に関するポイント
株式会社が消費税を納める必要があるかどうかは、設立してからの売上規模によって異なります。
- 設立から2期目までは資本金1,000万円未満であれば免税事業者となる
- 課税売上高が1,000万円を超えた場合、翌々事業年度から消費税の納税義務が発生
- インボイス制度の導入により、取引先がインボイス登録事業者を求める可能性がある
株式会社の場合、事業拡大を考えている場合は課税事業者になるタイミングを見極め、事前に準備を行うことが重要です。
社会保険の負担はどうなるか
株式会社を設立すると社会保険への加入義務が発生します。
これは役員1人の会社でも対象となるため、一定のコストを考慮する必要があります。
主な社会保険の種類と負担割合は以下のとおりです。
保険の種類 | 企業負担 | 個人負担 |
---|---|---|
健康保険 | 約5% | 約5% |
厚生年金 | 約9% | 約9% |
雇用保険 | 0.6〜0.9% | 0.3〜0.6% |
株式会社の社会保険負担は、合同会社と比べて基本的に変わりませんが、法人としての義務として加入しなければなりません。
特に役員報酬を支払う場合は、社会保険料も考慮した報酬設計をすることが重要です。
合同会社と株式会社の税金を比較

税負担の違い
合同会社と株式会社では、法人税や地方税の負担に違いがあります。
どちらの形態を選ぶかによって税金の額が変わるため、慎重に比較することが重要です。
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
法人税 | 課税所得に応じて決定 | 合同会社と同様 |
法人住民税 | 均等割+所得割 | 合同会社と同様 |
法人事業税 | 所得金額に応じて変動 | 合同会社と同様 |
利益配分時の税金 | 出資者への分配には個人所得税が適用 | 配当時に法人税+個人の配当所得税が発生 |
基本的な法人税や法人住民税、法人事業税はどちらも同じような仕組みですが、合同会社は利益分配時に特別な法人税がかからないという点が大きな違いです。
株式会社の場合は、企業が利益を配当に回すと、法人税に加えて株主が配当所得税を支払う必要があります。
役員報酬と所得税の関係
会社の代表が受け取る役員報酬の仕組みは、合同会社と株式会社で異なります。
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
役員報酬の税制 | 事業所得または給与所得として課税 | 給与所得として課税 |
社会保険料の負担 | 役員の位置づけによって変動 | 代表取締役は社会保険適用 |
合同会社の場合、役員報酬は「事業所得」として控除が可能なケースがあります。
このため、個人事業主と同様に青色申告特別控除を活用できる可能性があります。
一方で、株式会社の役員報酬は「給与所得」となり、通常の所得控除が適用されます。
利益配分と税金への影響
会社が得た利益の処理方法によって、合同会社と株式会社の税金の負担が変わります。
合同会社では利益を出資者へ直接分配できるため、法人税の負担が比較的軽減される傾向にあります。
これに対し、株式会社は配当を行うと「法人の法人税+株主の配当所得税」が発生します。
そのため、事業規模が小さいうちは合同会社の方が税金面で有利になる場合があります。
節税対策の違い
どちらの法人形態でも節税対策は重要ですが、それぞれ適した方法が異なります。
- 合同会社は役員報酬を事業所得とすることで所得税を軽減できる可能性があります。
- 株式会社は役員報酬の設定を工夫することで法人税と所得税のバランスを取る節税策が考えられます。
- 合同会社は配当を行わないため、法人税のみで税額を調整しやすいです。
- 株式会社は研究開発費の税額控除など、大企業向けの税制優遇策を活用することで節税が可能です。
規模が小さいうちは合同会社の方が税制面の柔軟性があるため有利なケースも多いですが、事業が拡大するにつれて株式会社の方が節税の選択肢が広がることもあります。
合同会社と株式会社はどちらがお得か

事業規模や目的に応じた選択
合同会社と株式会社のどちらが適しているかは、事業規模や目的によって異なります。
小規模事業やスモールスタートを考えている場合、設立費用やランニングコストが低い合同会社が有利です。
一方で、事業を拡大し投資を受けたい場合は、株式発行が可能で社会的信用が高い株式会社の方が適しています。
たとえば、フリーランスが法人化を検討する場合、初期投資が少なく維持コストの低い合同会社が魅力的です。
しかし、将来的に株式公開や資金調達を考えるなら、最初から株式会社にしておく方がスムーズでしょう。
税金以外のコストも考慮
税金だけでなく、設立費用や維持費用といったコストも含めた選択が重要です。
以下の表では、合同会社と株式会社の主なコストを比較します。
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
設立費用 | 約6万円(登録免許税のみ) | 約20万円(定款認証費用+登録免許税) |
定款認証 | 不要 | 公証役場で認証が必要(約5万円) |
毎年の税負担(最低額) | 約7万円 | 約7万円 |
社会保険加入義務 | あり | あり |
決算公告義務 | なし | あり(余分なコストが発生) |
このように、合同会社の方が初期費用や運営コストが安く済むため、小規模事業やコスト削減を重視する経営者には適した選択肢となります。
長期的な経営視点での比較
長期的な視点では、事業の成長戦略に応じた選択も重要です。
合同会社は、利益配分を自由に決められるため、経営メンバー間で柔軟な利益分配が可能です。
しかし、投資家からの資金調達には不向きであり、大きな事業展開を目指す際の障壁になる可能性があります。
一方で、株式会社は株式による資本調達が可能であり、将来的なM&Aや上場を視野に入れることもできます。
そのため、数年後に事業拡大を検討している場合は、最初から株式会社を選択する方が良いでしょう。
また、社会的信用の面でも株式会社が優位です。取引先によっては「株式会社でないと契約できない」といったケースもあるため、信用力を考慮して法人形態を選ぶことも重要です。
以上のように、合同会社と株式会社のどちらがお得かは事業の目的、資金調達の必要性、経営の柔軟性、コスト面など多角的に比較して決定するべきです。
どちらを選ぶか迷った際には、税理士や専門家に相談し、自社の状況に合った形態を選択することが推奨されます。
まとめ
合同会社と株式会社の税金を比較すると、それぞれにメリット・デメリットがあることが分かります。
合同会社は法人税率が同じでも利益配分の柔軟性があり、税務上の取り扱いによって節税の余地が広がる可能性があります。
一方で、株式会社は社会的信用が高く、投資を受けやすい特徴があります。
税負担の面では、合同会社は役員報酬を設定せずに利益を分配できる点が特徴ですが、社会保険料の負担も考慮する必要があります。
事業の規模や成長戦略によって、どちらの形態が適しているかが変わります。
最終的には、税金だけでなく経営方針や資金調達、長期的な成長を踏まえた上で、合同会社と株式会社のどちらを選ぶかを検討することが重要です。