株式会社を設立するには、資本金や発起人の要件、必要な手続きなど、さまざまな条件を満たす必要があります。
本記事では、株式会社を設立するための具体的な条件や必要な費用、手続きの流れについて徹底解説します。
資本金1円でも設立が可能なのか、どのような書類が必要なのかなど、初めて会社設立を考える方にも分かりやすく説明します。
結論として、現在の会社法では、資本金は最低1円からでも株式会社を設立できます。
ただし、実際に会社を運営する上では、事業資金や信用の面から適切な資本金を設定することが重要です。
また、定款の作成や登記の申請など、法的な手続きも必要となります。
本記事を読むことで、株式会社設立の全体像を理解し、スムーズな設立を進めるための準備ができるようになります。
株式会社を設立するための基本条件
株式会社とは何か
株式会社とは、会社法に基づいて設立される法人であり、株主が出資した資本金をもとに事業を行う法人形態の一つです。
株式を発行し、出資者はその株式を所有することで会社の所有権を保有します。
株式会社は経営と所有が分離されており、取締役が会社の経営を担います。
また、株式会社は有限責任の法人であるため、株主が負う責任は出資額の範囲内に限定されます。
これにより、個人の財産をリスクにさらすことなく会社経営に参画できるというメリットがあります。
株式会社設立に必要な基本要件
株式会社を設立するためには、以下の基本要件を満たす必要があります。
要件 | 概要 |
---|---|
資本金 | 最低1円以上の資本金が必要。 |
発起人 | 最低1名以上の発起人が必要。 |
取締役 | 取締役1名以上を選任する必要がある。 |
定款 | 会社の基本ルールを定める定款を作成し、公証役場で認証を受ける。 |
本店所在地 | 会社の拠点となる本店所在地を決定する。 |
登記 | 法務局に設立登記を申請する。 |
株式会社を設立するためには、これらの要件を満たした上で、適切な手続きを踏む必要があります。
資本金1円でも株式会社は設立できるのか
会社法の改正により、現在では1円からの資本金で株式会社を設立することが可能です。
かつては最低資本金制度として、株式会社は1,000万円以上、有限会社は300万円以上の資本金が必要でしたが、この制度は廃止されました。
しかし、資本金1円での設立には注意が必要です。
資本金が著しく少ない場合、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
- 金融機関の信用を得にくいため、融資を受ける際に不利となる。
- 取引先が資本金の少なさを理由に取引を敬遠する可能性がある。
- 事業開始後の運転資金が不足しやすく、すぐに資金繰りが苦しくなるリスクがある。
そのため、実際に株式会社を設立する際には、資本金1円ではなく、事業計画や初期費用を考慮して適切な額を設定することを推奨します。
特に、事業の種類や信用力を重視する業界では、ある程度まとまった金額を用意することが望ましいでしょう。
また、資本金額によっては、税制上の優遇措置を受けられる場合もあります。
例えば、資本金が1,000万円未満の場合は消費税の免税事業者として扱われることが多いですが、一定の条件を満たした場合にのみ適用される点には注意が必要です。
以上のように、株式会社は資本金1円でも設立できるものの、現実的には事業の運営を考慮した資本金設定が重要となります。
株式会社設立の具体的な条件

会社法における設立要件
株式会社を設立するには、日本の会社法の規定に従う必要があります。
会社法は、株式会社の設立に関する基本的なルールを定めており、要件を満たさなければ登記することができません。
具体的には、以下の要件を満たす必要があります。
要件 | 内容 |
---|---|
発起人の存在 | 会社を設立するために、発起人が1人以上必要 |
定款の作成 | 会社の基本ルールを定めた定款を作成し、公証役場で認証を受ける |
資本金の払い込み | 発起人が定めた資本金を払い込む |
登記の申請 | 法務局に必要書類を提出し登記を完了させる |
発起人の条件と必要な人数
株式会社の設立には、最低1人以上の発起人が必要です。
発起人とは、会社の設立を企画し、定款の作成や資本金の払い込みを行う者を指します。
発起人になるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 個人または法人であること
- 未成年者や成年被後見人、被保佐人でないこと
- 会社設立の意思を持ち、必要な手続きを行えること
発起人は設立時に株式を引き受ける必要があり、最低1株を保有することが求められます。
取締役の条件と必要な人数
株式会社を設立するには、役員を選任する必要があります。
取締役の人数は、最低1名以上とされています。なお、監査役や取締役会の設置は、規模によって任意となります。
取締役には以下の条件があります。
- 自然人(個人)であること(法人は不可)
- 成年年齢に達していること
- 会社法の欠格事由に該当しないこと(例:破産者で復権を得ていない者など)
取締役の選任は発起人または設立時の株主総会で決議され、退任や辞任があった場合は速やかに変更登記を行う必要があります。
定款の作成と認証
株式会社の設立には定款の作成が不可欠です。
定款とは、会社の運営ルールを記載した基本的な文書であり、公証役場にて認証を受ける必要があります。
定款に記載すべき事項
会社法では、定款に最低限以下の事項を記載することが義務付けられています。
項目 | 内容 |
---|---|
商号 | 会社の正式な名称 |
目的 | 会社が行う事業内容 |
本店所在地 | 会社の主たる事務所の所在地 |
資本金の額 | 設立時の資本金の額 |
発起人の氏名・名称および住所 | 設立する者の情報 |
定款の認証
定款は作成しただけでは効力がなく、公証役場に持ち込んで定款認証を受ける必要があります。
認証を受けることで、定款が正式なものとして効力を持ちます。
定款認証の流れは以下の通りです。
- 定款を作成する(電子定款または紙の定款)
- 公証役場に予約を入れる
- 必要書類(定款・発起人の印鑑証明書など)を提出する
- 公証人による審査を受ける
- 審査が通れば認証を受け、定款の認証済み写しを受け取る
電子定款を利用する場合、印紙税4万円が不要になるため、コストを抑えたい場合は電子定款を検討すると良いでしょう。
株式会社設立の手続きと流れ

商号の決定と登記の可否確認
株式会社を設立する際、まず商号(会社名)を決定する必要があります。
商号は自由に決められますが、以下の点に注意が必要です。
- 同一住所で同じ商号は使用できない。
- 公序良俗に反する名称は使用できない。
- 「株式会社」という単語を商号の前または後に付ける必要がある。
商号が決まったら法務局の「商号調査」を行い、すでに同じ住所で同名の企業が存在しないか確認します。
事前調査を怠ると、設立後に商号を変更しなければならない可能性があるため、慎重に行いましょう。
本店所在地の決定
会社の本店所在地は、登記事項として登録されるため、明確に決める必要があります。
一般的には以下の選択肢が考えられます。
- 自宅を本店所在地とする
- 賃貸オフィスを借りる
- バーチャルオフィスを利用する
本店所在地が決まったら、管轄の法務局を確認しておきましょう。
所在地によって登記を申請する法務局が変わるため、事前のチェックが必要です。
資本金の払い込み
株式会社設立には資本金を払い込む必要があります。
資本金は1円から設定可能ですが、事業運営や信頼性の観点から、ある程度の金額を用意することが推奨されます。
資本金の払い込みに関するポイントは以下の通りです。
- 発起人個人の銀行口座に入金する(法人名義の口座はまだ開設不可)。
- 入金証明として通帳のコピーを用意する。
- 資本金額は定款に記載した金額と一致している必要がある。
資本金は設立後、会社の銀行口座を開設したら速やかに移すことが重要です。
登記申請と必要書類
会社設立において最も重要なのが法務局への登記申請です。
登記は設立日を決定する重要な手続きであり、申請時点で会社が法的に成立します。
登記申請には以下の書類を準備する必要があります。
必要書類 | 主な内容 |
---|---|
定款 | 会社の基本規則を定めた書類で、公証役場で認証済みである必要がある。 |
登記申請書 | 会社設立の事実を法務局に届け出るための書類。 |
資本金の払込証明書 | 発起人の口座に設立資本金が入金されたことを示す書類。 |
発起人の印鑑証明書 | 発起人の本人確認のために必要。市区町村役場で取得可能。 |
登録免許税の納付証明 | 登録免許税の支払い(資本金の0.7%または最低15万円)を証明する書類。 |
これらの書類を準備し、管轄の法務局に登記申請を行います。
通常、登記完了までに1週間程度かかります。
設立後に必要な手続き
登記が完了したら、法人として様々な手続きを行う必要があります。
設立後に必須となる主な手続きを以下にまとめます。
- 税務署への届出会社が設立したら、所轄の税務署に「法人設立届出書」を提出する必要があります。また、青色申告を希望する場合は「青色申告の承認申請書」も併せて提出します。
- 社会保険・労働保険の手続き従業員を雇う場合、社会保険や労働保険の加入が義務付けられています。年金事務所、労働基準監督署、ハローワークで必要な手続きを行いましょう。
- 法人銀行口座の開設法人名義の銀行口座を開設することで、取引先との資金のやり取りがスムーズになります。銀行によって必要書類が異なるため、事前確認が重要です。
- 会社の印鑑登録会社の実印を法務局に登録することで、契約書や公式書類に使用できるようになります。これは法人の信用を高めるためにも重要な手続きです。
これらの手続きを適切に行い、円滑に会社運営を開始できるよう準備を整えましょう。
株式会社設立の費用と必要資金

資本金の金額と設定の考え方
株式会社を設立する際には資本金の額を決定する必要があります。
日本の会社法では、資本金1円でも株式会社を設立することは可能ですが、現実的には十分な資本金を用意することが重要です。
資本金の額が少なすぎると、銀行口座の開設が難しくなったり、取引先からの信用を得にくくなったりする可能性があります。
一般的には最低でも数十万円以上の資本金を用意することが推奨されています。
また、税制面や助成金の対象となるためには、一定額以上の資本金を設定することが有利になる場合があります。
例えば、資本金が1000万円未満であれば、設立後の消費税が一定期間免除される可能性があります。
登録免許税とその他の法定費用
会社を設立する際には、法定費用がかかります。
そのうち、最も重要な費用が登録免許税です。
登録免許税は、会社の登記を行う際に法務局へ支払う税金です。
費用項目 | 金額 |
---|---|
登録免許税(最低額) | 150,000円 |
登録免許税(資本金×0.7%) | 資本金の0.7% |
登録免許税は最低15万円とされており、資本金の0.7%が15万円を超える場合は、そちらの金額が適用されます。
例えば、資本金が2,500万円の場合、0.7%を計算すると17万5,000円となるため、登録免許税は17万5,000円となります。
定款の認証費用
株式会社を設立する際には定款の作成と認証が必要です。
定款とは、会社の基本的なルールを定めた書類で、公証役場で認証を受ける必要があります。
定款の認証には公証人手数料が発生します。
定款を紙で作成する場合は、印紙税が発生するため電子定款を利用するとコストを抑えられます。
費用項目 | 金額 |
---|---|
公証人手数料 | 50,000円 |
定款の謄本手数料 | 約2,000円 |
印紙税(紙定款のみ) | 40,000円 |
電子定款の場合は印紙税の4万円が不要となるため、コスト削減につながります。
そのため、多くの企業が電子定款を利用しています。
司法書士や行政書士への依頼費用
会社設立の手続きを専門家に依頼することで手続きのミスを防ぎ、スムーズに会社を設立することができます。
特に、定款の作成や登記申請は専門知識が必要なため、司法書士や行政書士に依頼するケースが多くなっています。
以下に、司法書士や行政書士への依頼する場合の費用相場を示します。
依頼内容 | 費用相場 |
---|---|
司法書士への登記申請依頼 | 50,000円~100,000円 |
行政書士への定款作成依頼 | 40,000円~80,000円 |
電子定款対応 | 10,000円~30,000円 |
専門家に依頼することで、登記手続きに関するミスや手戻りが発生するリスクを低減できます。
特に、複雑なケースでは専門家の知見が有用になるため、安心して会社設立を進めるための選択肢として検討するとよいでしょう。
株式会社設立のメリットとデメリット

株式会社を設立するメリット
株式会社を設立することで、さまざまなメリットを享受できます。
以下に、代表的なメリットを具体的に解説します。
信用力の向上
株式会社は法人格を持ち、登記することで公的に認められた企業となります。
そのため、銀行や取引先からの信用が高まり、資金調達や契約締結が有利になります。
資金調達のしやすさ
株式会社は株式発行による資金調達が可能であり、出資者を募ることで法人の成長を加速させることができます。
また、金融機関からの融資も受けやすく、ビジネスの拡大に役立ちます。
有限責任によるリスク軽減
出資者(株主)は有限責任制のもとで運営されるため、会社が負債を抱えた場合でも、出資した範囲内での責任しか負いません。
個人事業主とは異なり、私財をリスクにさらす必要が少なくなります。
経営と所有の分離
株式会社では、代表取締役などの経営陣と株主が分離されているため、オーナー個人がすべての業務を担う必要がありません。
適切な人材を確保することで、経営の効率化が可能です。
事業承継の容易さ
個人事業とは異なり、株式会社は株式の譲渡による事業承継が可能です。
そのため、後継者へのスムーズな引き継ぎがしやすく、長期的な事業運営を計画できます。
節税効果の可能性
株式会社は法人税制が適用されるため、個人事業主に比べて税率が低くなる場合があります。
また、損失の繰越控除や役員報酬の経費計上など、多くの節税対策が可能です。
株式会社を設立するデメリット
株式会社には多数のメリットがある反面、一定のデメリットも存在します。
以下にその主なポイントを紹介します。
設立費用と維持費用がかかる
株式会社を設立する際には登録免許税・定款認証費用などが必要となり、個人事業主に比べて初期コストが高くなります。
また、法人としての各種手続きを維持するために、会計・税務処理の費用も発生します。
手続きが複雑
株式会社の設立には定款の作成・認証、登記申請など、多くの法的手続きが必要です。
さらに、法人税の申告や決算の作成など、運営に関わる義務も増えるため、手間がかかります。
経理・会計の負担が増える
株式会社は法人としての財務管理が求められるため、会計処理が複雑になります。
特に、税務申告は専門的な知識が必要なため、税理士への依頼が不可欠となるケースも多いです。
利益の分配が必要
会社の利益は配当金として株主へ還元されることが求められるため、経営陣が自由に使える資金が制限される場合があります。
また、役員報酬の決定にも一定のルールが存在します。
他の法人形態との違い
株式会社以外にも、合同会社や個人事業主といった法人形態が存在します。
それぞれの違いを理解し、目的に合った形態を選ぶことが重要です。
法人形態 | 設立費用 | 資金調達 | 経営の自由度 | 信用力 |
---|---|---|---|---|
株式会社 | 高い(約20万円以上) | 株式発行で可能 | 役員の定めあり | 高い |
合同会社 | 低い(約6万円) | 出資者から調達 | 自由度が高い | 中程度 |
個人事業主 | ほぼ不要 | 自己資本のみ | 非常に高い | 低い |
このように、株式会社には多くのメリットとデメリットが存在します。
事業の成長性や運営のしやすさを考慮しながら、最適な法人形態を選びましょう。
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まとめ
株式会社を設立するためには、会社法に基づく一定の条件を満たす必要があります。
発起人は1名以上、取締役は原則1名以上必要であり、資本金は1円からでも設立可能です。
ただし、信用力や資金調達の観点から、ある程度の資本金を用意するのが望ましいでしょう。
また、定款の作成・認証、登記申請などの手続きが必要で、設立には登録免許税や定款認証費用がかかります。
司法書士や行政書士への依頼を検討するのも一案です。
株式会社の特徴として、資本が有限責任であることや、社会的な信用力が高い点がメリットとなります。
一方、設立や運営に費用と手間がかかるため、合同会社など他の法人形態との違いを理解したうえで選択することが重要です。