「有限会社の設立費用」をお調べですか?
結論から言うと、法改正により現在、有限会社を新しく設立することはできません。
この記事では、起業時の代替案となる「株式会社」と「合同会社」の設立費用・内訳の徹底比較や、専門家依頼時のコスト差を分かりやすく解説します。
さらに、既存の有限会社を株式会社へ移行する際にかかる費用や必要書類、電子定款や登録免許税の減免制度を活用して設立費用を数万円単位で安く抑える実践的な裏ワザまで網羅しました。
この記事を読めば、最も損をしない最適な会社設立ルートと具体的な予算がすべて分かります。
1. 有限会社の設立費用を調べる前に知っておくべき制度の基本
「有限会社を設立したいけれど、費用はどのくらいかかるのだろう」と調べている方は非常に多いです。
しかし、具体的な費用を計算する前に、まずは現在の日本の法律において、有限会社という組織形態がどのような扱いになっているかを正しく理解しておく必要があります。
結論からお伝えすると、現在、有限会社を新しく作ることはできません。
ここでは、その理由と現在の起業における現実的な選択肢について分かりやすく解説します。
1.1 有限会社は新しく設立できない
日本国内において、有限会社を新しく設立することは法的に不可能となっています。
これは、2006年(平成18年)5月1日に施行された「会社法」という法律の大幅な改正が理由です。
この会社法の施行に伴い、それまで根拠法となっていた「有限会社法」が廃止されました。
これ以降、有限会社の新設手続き自体が認められなくなったため、現在どれだけ費用を支払おうとしても、新規に有限会社を立ち上げることはできません。
なお、2006年4月以前から存在していた有限会社は、法律上「特例有限会社」という位置づけになり、現在もそのまま存続して営業を続けることが認められています。
街中で見かける有限会社は、すべて2006年の法改正前から事業を行っている歴史のある会社です。
1.2 現在の選択肢は株式会社か合同会社の二択
新しく会社を設立して起業する場合、有限会社に代わる現在の選択肢は、「株式会社」または「合同会社(LLC)」の二択が基本となります。
会社法改正によって最低資本金制度(かつて株式会社は1,000万円、有限会社は300万円が必要だった規制)が撤廃され、どちらの会社組織も「資本金1円から」設立できるようになりました。
それぞれの特徴を比較すると以下のようになります。
ご自身のビジネスモデルや予算に合わせて選択することが重要です。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 社会的信用度 | 非常に高い(認知度が抜群) | 認知度は向上中だが株式会社に劣る |
| 設立費用 | 高い(約20万円〜) | 安い(約6万円〜) |
| 意思決定のルール | 所有(株主)と経営の分離が原則 | 所有と経営が一致(出資者全員が業務執行権を持つ) |
| 利益の配分方法 | 出資比率(保有株式数)に応じる | 定款で定めれば出資比率に関わらず自由に分配可能 |
| 役員の任期 | 最長10年(定期的な登記書き換えが必要) | 任期の制限なし(登記費用を節約可能) |
かつて有限会社が選ばれていた理由は「株式会社よりも少額の資本金で設立できること」や「役員の任期に制限がないこと」でした。
現在の合同会社は、この「旧有限会社」のメリットの多くを引き継いだ非常に使い勝手の良い組織形態として、多くのスモールビジネスや外資系企業の日本法人に選ばれています。
2. 株式会社と合同会社の設立費用を徹底比較

現在、新しく会社を設立する際の主な選択肢は「株式会社」と「合同会社」の2つです。
かつての有限会社に近い感覚で設立できる合同会社と、社会的信用度の高い株式会社では、設立にかかる初期費用に大きな差があります。
ここでは、それぞれの設立費用の内訳と、自分で手続きを行う場合と専門家に依頼する場合の費用差を詳しく解説します。
2.1 株式会社の設立費用と内訳
株式会社を設立する場合、法定費用(法律で支払いが義務付けられている費用)だけで最低でも約22万〜24万円の実費が必要となります。
株式会社の設立費用における最大の特徴は、公証役場での「定款認証手数料」が発生する点です。
| 費用項目 | 金額(紙の定款の場合) | 金額(電子定款の場合) | 概要・補足 |
|---|---|---|---|
| 定款印紙代 | 40,000円 | 0円 | 定款に貼付する印紙税。電子定款にすることで節約可能。 |
| 定款認証手数料 | 30,000円〜50,000円 | 30,000円〜50,000円 | 資本金の額に応じて変動(300万円未満は3万円、300万〜500万円未満は4万円、500万円以上は5万円)。 |
| 定款謄本手数料 | 約2,000円 | 約2,000円 | 公証役場で保存用と会社提出用の謄本を取得する手数料(1枚250円)。 |
| 登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 | 法務局に登記申請する際に支払う税金。資本金額の1000分の7(これに満たない場合は一律15万円)。 |
| 合計金額 | 約242,000円〜 | 約202,000円〜 | この他に、会社の代表者印(実印)の作成費用や印鑑証明書の取得費用が数千円〜数万円程度かかります。 |
2.2 合同会社の設立費用と内訳
合同会社(LLC)は、株式会社に比べて設立費用を大幅に安く抑えられるのが最大のメリットです。
公証役場での定款認証が不要であるため認証手数料がかからず、登録免許税の最低金額も低く設定されています。
| 費用項目 | 金額(紙の定款の場合) | 金額(電子定款の場合) | 概要・補足 |
|---|---|---|---|
| 定款印紙代 | 40,000円 | 0円 | 株式会社と同様に、電子定款を選択することで0円にできます。 |
| 定款認証手数料 | 0円 | 0円 | 合同会社は定款の公証人による認証が法律上不要です。 |
| 登録免許税 | 60,000円 | 60,000円 | 法務局に支払う税金。資本金額の1000分の7(これに満たない場合は一律6万円)。 |
| 合計金額 | 約100,000円 | 約60,000円 | 電子定款を利用して自分で登記申請を行えば、法定費用は実質6万円のみに抑えられます。 |
2.3 自分で手続きする場合と専門家に依頼する場合の費用比較
会社設立の手続きは、すべて自分で行う方法と、司法書士や行政書士、税理士などの専門家に代行を依頼する方法があります。
一見すると自分で行う方が安く済むように思えますが、専門家に依頼した方が実質的な負担額や手間の面で得になるケースも少なくありません。
2.3.1 自分で手続きを行う場合のメリット・デメリット
自分で手続きをする場合のメリットは、専門家への報酬(手数料)が発生しない点です。
しかし、電子定款を作成するためには、ICカードリーダーや専用のPDF署名ソフトなどの環境を整える必要があり、これらを揃えるだけで数万円の出費となることがあります。
また、書類の不備による手戻りが発生しやすく、法務局や公証役場に何度も足を運ぶ時間的ロスが生じる点がデメリットです。
2.3.2 専門家に依頼する場合の費用相場とメリット
司法書士などの専門家に依頼する場合、法定費用に加えて「代行報酬(手数料)」が上乗せされます。
専門家に依頼する場合の費用相場は以下の通りです。
| 依頼先(専門家) | 代行報酬の相場 | 特徴とメリット |
|---|---|---|
| 司法書士 | 50,000円〜100,000円 | 登記申請の代理権を持っているため、書類作成から法務局への申請まで一括して丸投げが可能です。 |
| 行政書士 | 30,000円〜70,000円 | 定款作成や許認可申請のプロですが、法務局への登記申請自体は代理で行えないため、最終的な申請は自身で行う必要があります。 |
| 税理士(顧問契約前提) | 0円〜30,000円 | 設立後に税務顧問契約を結ぶことを条件に、設立手数料を格安または無料にしてくれる事務所が多く存在します。 |
専門家は標準で電子定款に対応しているため、自分で行うと発生する定款印紙代4万円が不要になります。
そのため、「専門家への報酬」と「浮いた印紙代4万円」が相殺され、実質数万円程度の差額で、正確かつ迅速に会社を設立することが可能になります。
特に、創業期の忙しい時期に本業に集中したい場合は、専門家への依頼を強くおすすめします。
3. 既存の有限会社を株式会社にする移行費用

現在、有限会社(特例有限会社)を経営している方のなかには、取引先からの信用力向上や事業拡大を見据えて、株式会社への移行(商号変更)を検討している方も多いのではないでしょうか。
有限会社から株式会社へ移行するためには、法律で定められた実費(法定費用)や、手続きを外注する場合の専門家報酬などの費用が発生します。
ここでは、移行にかかる具体的な費用内訳や、手続きに必要な書類、実際の流れについて詳しく解説します。
3.1 有限会社から株式会社への移行にかかる費用内訳
有限会社から株式会社に移行する(商号変更による設立登記および解散登記を行う)手続きには、最低でも約10万円の法定費用(実費)が必要となります。
株式会社をゼロから新規設立する場合とは異なり、定款の認証手数料(約3万〜5万円)はかかりませんが、登記申請の際に国に納める登録免許税が主な負担となります。
移行手続きに必要な主な費用内訳は、以下の通りです。
| 費用項目 | 金額(目安) | 概要・備考 |
|---|---|---|
| 株式会社の設立登記の登録免許税 | 60,000円 | 資本金の額の1,000分の1.5。ただし、これが6万円に満たない場合は一律6万円となります。 |
| 有限会社の解散登記の登録免許税 | 30,000円 | 商号変更に伴い、既存の有限会社を解散させるための登記費用です。 |
| 登記事項証明書(登記簿謄本)の取得費 | 約1,200円〜2,400円 | 手続き完了後に、新会社の証明書を法務局で取得する費用(1通600円、オンライン申請時480円)。 |
| 会社の代表者印(実印)の作成費用 | 約5,000円〜20,000円 | 「株式会社」の文字が入った新しい代表者印を新調する場合に発生します。 |
| 司法書士への報酬(依頼する場合のみ) | 約50,000円〜100,000円 | 登記申請手続きの代理や、必要書類の作成を司法書士に依頼する場合の専門家費用です。 |
自分で全ての登記手続きを行う場合の実費合計は約10万円程度ですが、登記手続きの正確性を期すために司法書士へ依頼する場合は、総額で約15万〜20万円程度を見込んでおく必要があります。
3.2 移行手続きに必要な書類と流れ
有限会社から株式会社への移行は、実質的には「有限会社の解散登記」と「株式会社の設立登記」を同時に申請する手続きとなります。
そのため、準備すべき書類が多岐にわたる点に注意が必要です。
3.2.1 移行手続きに必要な主な書類
法務局へ提出する主な必要書類は以下の通りです。
会社の状況(役員の構成など)によって追加の書類が必要になる場合もあります。
- 株式会社の設立登記申請書
- 有限会社の解散登記申請書
- 株式会社の新しい定款(商号を「株式会社」に変更したもの)
- 株主総会議事録(商号変更や定款変更を決議したもの)
- 株主リスト(議決権を有する株主の氏名や持分を記載したもの)
- 取締役の就任承諾書(および必要に応じて監査役の就任承諾書)
- 取締役の印鑑証明書(新しく就任する役員等、要件に該当する者のもの)
- 新会社の代表取締役の印鑑届書(新しい代表印を登録するため)
3.2.2 移行手続きの具体的な流れ
手続きは、以下のステップに沿って進めます。
商号変更の決議から登記完了まで、おおむね2週間から1ヶ月程度の期間を要します。
- 株主総会の招集と決議:有限会社の臨時株主総会を開催し、商号を株式会社に変更する定款変更の決議を行います。この際、取締役や監査役などの役員構成や、発行可能株式総数なども合わせて決定します。
- 必要書類の作成と調印:株主総会議事録や新しい定款、就任承諾書などを作成し、関係者が署名・捺印を行います。同時に、新しい「株式会社」の印鑑(代表者印)を作成します。
- 登記申請:本店の所在地を管轄する法務局へ、「有限会社の解散登記申請書」と「株式会社の設立登記申請書」を同時に提出します。登録免許税分の収入印紙を台紙に貼付して納付します。
- 登記完了と事後手続き:法務局での審査(通常1〜2週間程度)が完了すると、正式に株式会社となります。登記完了後は、税務署、都道府県税事務所、年金事務所、労働基準監督署などの各行政機関へ名称変更の届出を行います。また、銀行口座の名義変更や取引先への通知も速やかに行う必要があります。
4. 設立費用を抑えて賢く起業する方法

会社設立にはまとまった資金が必要ですが、国や自治体の制度、最新のデジタル手続きを賢く活用することで、設立費用を大幅に削減することが可能です。
ここでは、起業時に必ず実践したい具体的なコスト削減手法を解説します。
4.1 電子定款の活用で4万円を節約する
会社を設立する際、会社の根本規則を定めた「定款(ていかん)」を作成し、公証役場で認証を受ける(株式会社の場合)必要があります。
このとき、従来の紙で作成された定款には、印紙税法に基づき4万円の収入印紙を貼付しなければなりません。
しかし、定款をPDFなどの電子データで作成する「電子定款」を選択すれば、印紙税が非課税となり、4万円の費用を丸ごと節約できます。
電子定款を利用した場合のコスト差は以下の通りです。
| 定款の形式 | 収入印紙代 | 必要な機器・環境 |
|---|---|---|
| 紙の定款 | 40,000円 | 不要(紙に印刷して署名捺印) |
| 電子定款 | 0円 | マイナンバーカード、ICカードリーダー、PDF署名プラグイン等 |
4.1.1 電子定款を個人で作成する際の注意点
電子定款を作成するためには、マイナンバーカードやICカードリーダー、PDFに電子署名を行うための専用ソフト(Adobe Acrobat等)や機器を揃える必要があります。
これらを個人で一から準備すると、機材の購入費用で数万円かかってしまい、結果として節約効果が薄れるケースがあります。
そのため、起業支援ソフト(クラウド会社設立サービス)を利用するか、電子定款の作成・認証のみを格安で代行してくれる行政書士や司法書士などの専門家に依頼するのが、最も手軽で確実な方法です。
4.2 登録免許税の減免制度を利用する
法務局に登記を申請する際に支払う「登録免許税」は、株式会社で最低15万円、合同会社で最低6万円がかかります。
この登録免許税を半額に減免できる、国が実施する強力な支援制度が存在します。
4.2.1 特定創業支援等事業による登録免許税の半額減免
政府が推進する「産業競争力強化法」に基づき、市区町村が実施する「特定創業支援等事業」の支援を受けることで、登録免許税の減免措置を受けることができます。
この制度を利用すると、設立時の税負担が以下のように軽減されます。
| 会社形態 | 通常の登録免許税 | 減免制度適用後の登録免許税 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 最低 150,000円 (資本金の1000分の7) | 最低 75,000円 (資本金の1000分の3.5) |
| 合同会社 | 最低 60,000円 (資本金の1000分の7) | 最低 30,000円 (資本金の1000分の3.5) |
4.2.2 特定創業支援等事業のメリットと適用条件
この減免措置を受けるためには、以下のステップを踏む必要があります。
まず、創業予定の自治体(または創業予定の地域を管轄する市区町村)が実施している、創業セミナー、個別相談、起業塾などの「特定創業支援等事業」を受けます。
一般的には、1ヶ月以上にわたり「経営」「財務」「人材育成」「販路開拓」の4分野に関する講義や指導を継続して受講することが条件となります。
要件を満たした後、自治体に申請を行うことで「特定創業支援等事業により支援を受けたことの証明書」が発行されます。
この証明書を、法務局へ登記申請する際に添付することで、登録免許税の減免が適用されます。
なお、この証明書を取得すると、登録免許税の減免だけでなく、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の自己資金要件が緩和されたり、無担保・無保証人の創業関連保証の枠が拡充されたりするなど、資金調達の面でも非常に有利な優遇措置を受けることができます。
設立スケジュールに余裕がある場合は、必ず活用したい制度です。
5. まとめ
現在、有限会社を新しく設立することはできません。
これから起業する方は、設立費用を抑えられる合同会社か、社会的信用度の高い株式会社の二択から選ぶことになります。
また、既存の有限会社は、登録免許税などの費用を支払うことで株式会社へ移行可能です。
少しでも設立費用を抑えたい場合は、紙ではなく電子定款を利用して印紙代4万円を節約しましょう。
さらに、自治体の特定創業支援等事業による登録免許税の減免制度を活用すれば、より賢く、初期費用を抑えてスムーズに会社を設立できます。

